この季節、自転車で道を走っていると、どこからか笛の音が聞こえてくる。あっ、お祭りが近いんだ。
そうして思い浮ぶんだのは「久しくサバ寿司、食べてないなあ・・・」
以前はどこの家でも作っていたという鯖寿司。その伝統の味もスーパーの味に変わり忘れ去られてしまった?
と思いきや、ここだけは健在です。建部の誇る、仕出し弁当の横綱「河本食品」さん。
河本食品さんといえば鯖寿司は言うに及ばず、今では各種お弁当がJRの新幹線乗り場や岡山空港、サーキット場、高速道路、道の駅で
大人気。そのこれまでの足跡を創業者の河本 綱起・圭子、ご夫妻にお聞きしました。(聞き手 勝部公平)
(お弁当をはじめられたきっかけは?)
「昭和39年に会社を創立したんですが、まだ弁当屋のはしりでした。
それまでは漬物屋だったので小さい店に卸していたんですが、漬物を芯にして巻き寿司にしたんです。
そうしたら、お客さんが”漬物寿司”じゃ言うて、どんどん米飯が伸びていって、そのうち、学校に運動会をするんで
弁当を作ってくれと言われたりして、自然と寿司から弁当、仕出しへと拡がってきました。
”横綱”という名前も私が”綱起”なんで”綱(つな)ちゃん、つなちゃん”と呼ばれて
いるうちに”横綱さん”と呼ばれるようになったんで、全部、お客さんがアイデアをくれたんです」
(一代で、ここまで販路が広がった理由は)
「もう30年ほど前に空港とJRから、うちにも持って来いと言われて、それからですねえ。
空港とJRに入ってるならいいかげんなとこじゃあないだろうと。ほかにも次々に声がかかって。
こちらが出向いたわけじゃあなかったけど、いつのまにかこうなりました」
(ヒット商品「おむすびころりん」の発案はどなたが?)
「私(圭子さん)です。あの当時はまだ、おむすび弁当が出てなかった頃で。
何かいいものないかなあって、考えてたんです。パッケージも天満屋を歩いていて
あっ、この容器、おもしろいなあって。二段にしたらどうかなあって」
「わし(綱起さん)も駅で外人が”オムスビコロリン、クダサイ!”言うとるのを聞いた時はうれしかったなあ。
いつでも二人で出かけると地下に行くんで、子どもには嫌がられましたが(笑)」
(定評のある鯖寿司ですが、どうして始められたんですか?)
「これは創業以来ですが、うちに働きに来てくれていた人たちが残してくれたんです。
もうみんな天国にいかれてますが、建部のおばさんたちの五〜六人で、祭りが近付いて、
鯖寿司をしてみたら言うてくれたんです。塩抜きから酢に漬けるまで全部教えてくれて。
私は広島出身で食べたことがなかったので。
今となっては貴重な財産ですね」
(これからやりたいこととかは?)
「もう、若い者に任せているので、口を出すことはありません。わしはススッと前のように歩きたいなあ」
「私は建部の森に、ザクロのシルクロードを作りたい。勝部さん協力してください(笑)」
(記者感想)
今は娘の和子さんが会社を引き継ぎ、新しい食の提供に励んでおられます。お孫さんも若い感性で、
情報発信をお手伝いしています。これからますます楽しみな”横綱”さんです。
(グルメレポート)
箱の中から出した竹の皮に包まれた鯖寿司は、ずっしりと重い。紐とくと、甘酸っぱい香りが広がった。
薄黄色の昆布に透けてツヤツヤと光る青身が目に美しい。端を一切れ、箸でと思ったが、せっかくだから手でいただこう。
何とも贅沢な肉厚の鯖を酢飯がガッツリ受け止め、まさに好取組。
頬張ると鯖本来の旨さがしっかりと際立った。手を抜かない昔気質の寿司とでも言おうか、さすが横綱。
「う〜ん、うまい!」(三宅 美恵子)
『横綱』株式会社 河本食品
営業日 年中無休
地図グーグルマップ
〒709-3144 岡山市北区建部町富沢428-3
п@086-722-0205
fax 086-722-0221
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