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  石で描く「世界美術館」in福渡河川敷 2025年1月1日発信


 さあ自然をキャンバスにして、石ころ拾って並べてみよう。自由な発想、思いつきだけが頼りの一期一会の時間を楽しもう!!
 去年、暮、建部町福渡河川敷の歩道に作られた「石で描く名画」、観るチャンスの無い方への誌上展覧会。


建部町福渡旭川沿いグーグルマップ


シャヴァンヌ「貧しき漁夫」


石で描く

 建部町福渡の旭川河川敷は町民のお気に入りの散歩コース(愛犬たちも)、春は桜並木が続く。
 その歩道沿いに「石を並べる」、川の風景を背景に。そんなことを思いついたのは去年の夏ごろ、北斎の「石で描く富嶽八景展」をやっている時だった。
 何かもっと別の面白い表現はないか、そこで前から気になっていた旭川に浮かぶ川舟、どこかで見たような、何かを思い起こさせるシーン、「そうだ、あれは西洋美術館にある シャヴァンヌの絵のイメージだ」突如ひらめいた(笑)


石で描く

石で描く

 11月のある日、川舟をバックにとらえられる仮歩道のスペースをキャンバスに決める。ここなら人も通ることが、まず無いない。
 制作時間は2日と決めていた、しゃがみ込む作業だし、あまり人目についてもやりにくいから。


石で描く

 石はその辺からバケツ3杯ほど拾い集める、これならこのまま捨て置いても問題ないだろう。
 初日は舟の帆軸を描くに留める、これで全体構図が定まり、明日は早朝から一気に舟と漁夫を描き込むぞ。 


石で描く

石で描く

 結局、完成したのは翌々日、顔の部分で手間取った為。背後の川舟と同化するように絵に描かれた水平線は作らなかった。


 石で描く「貧しき漁夫」ユーチューブ動画(22秒)


レーピン「ヴォルガの船曳」

石で描く

 シャヴァンヌが19世紀フランスの写実派とすれば、ロシアのレーピンも同時代を代表する写実画家(但し、私の評価では共に2流)  この画家も川に住む人間を描いている。
 「ヴォルガの船曳」、革命前のどん底の船曳人夫をむごたらしいほどに荒んだ姿で。


石で描く

 このイメージが浮かんだのは、以前、福渡のお年寄りから聞いた話。
 「昔はこの旭川の川原にぎょうさん、舟を引っ張る者がおった、その者らは、ふんどし一丁で暮らしてた」
 舟の行きかうところ、上流へ舟を曳く人間が必要だった。


石で描く


 制作場所は下流の歩道の行き止まり、ここなら車も人もやって来ない。
 12月になって滅法冷え込むようになった、この場に立ち尽くせるのは午前中の陽のある時だけ。
 今回はストックの石をバンに数十箱に小分けして運ぶ、何がどれだけ必要かまだ皆目、見当がつかない。


石で描く


 描く人間は10人。どの顔も品がなく悪相である、画家自身は聖人に見立てたらしいが、そこは写実派、実際の船曳人をそのまま描いた結果がこうなった(笑)
 一人、一日のペースで進める。体に巻かれた皮のロープは裏山から拾った鉄赤色のゴタ石で表す。
 


石で描く


 制作から10日目、引き上げる舟をどこに配置するか、目の前の川からあたかも上がったような位置。


石で描く


 14日目、完成。しかし翌日には風で石が動き、動物の侵入した跡、再度やり直す(笑)


 石で描く「ヴォルガの船曳」ユーチューブ動画(43秒)



ドガ「舞台の踊り子」

石で描く


 河川敷で最も絵になる場所は八幡橋歩道橋の下、県の重要文化財指定の公孫樹がある公園。ここは木の幹にブランコを付けてフラゴナール風、またはヴァトー風、いやコロー風なシチュエーションが浮かぶ。
 ただそうなると、石を並べるベースを用意しないと無理。ふと迂回する舗道の隅にイチョウの絨毯が敷かれヤツデが茂る一角、ここに何かのイメージが呼び起された。
 ドガの踊り子が舞台裏から舞い出るシーン「これは面白い」


石で描く


 翌日、取り合えず思いつく白い石をいく種類か運び、座り込む。
 何人か知り合いが通りかかり「ようやるなあー」とあきれたように声を掛けられる(笑)


石で描く


 3日目、ほぼ完成、写真に撮って細部を確認する、「似てないなあ、でもこれはこれで、オモシロいぞ」(満足)


 
石で描く


おそらく、これが掲載された頃には石は壊れ、元の面影はなくなっているだろう。だから、それがいいのだ、また一から作り始める自分がいると信じてるから。


 石で描く「ドガ踊り子」ユーチューブ動画(22秒)



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