コロナで人の生活のリズムが変わらざるを得なくなって久しい。当新聞も地域のできごとや自然が移り変わる様を取材に出向くことが減少した。
それでも地球は回り、季節は変わる。前の川にも気がつけば小さなオレンジの光が一つ。「そうか、もうホタルが飛ぶぞー」あわてて新聞を振り返る。3年前、同月同日に特集記事を載せていた。
コロナが席巻した今も、建部の自然は変わらない。今年は再度、その記事をお届けします。
*その前にちょっと「ほたる学習」
教えてくださったのは、地元で「たけえだ生きものの里づくり」を提唱し、
ホタルの生態を10年以上に渡り調査されている佐藤康彦さんです。
(ゲンジボタルとヘイケボタルの違い)
「まず大きさが違います。ヘイケよりゲンジの方が大きいですね。
飛び方も違っていて、ゲンジは曲線を描くように、ヘイケは直線的に飛ぶんです」
(オスとメスの違い)
「オスはメスより若干小さいです。空中を飛んでるのはオスでメスは木の葉や草むらでじっとしています」
(ホタルはなぜ光る)
「オスが空中から下にいるメスに光を送り、メスも光ってそれに答えて
いる、相手を見つけてるわけです」
(ゲンジホタルは成虫になるまではどこにいる)
「水の中にいてカワニナ(巻貝)だけを食べて大きくなります。で、5月くらいに上陸を始めます。
ここ吉田では、矢淵川河口部、旭川との合流部が特に多いです。最終地点は確かではありませんが、
少し高台で増水時に浸かりにくく、穴が掘りやすい砂地のメダケの藪へ向う個体が多いことを
確認しています。そのあと土の中で蛹になって1ヶ月後に成虫になります」
(卵はどんなところに産むか)
「ここでは2010年に初めて産卵場所を特定できました。
日中も日陰になった場所で湿気があって川に突き出たヤナギ
の幹に集団で産卵していました。これまでの調査で、集団産卵するヤナギは
同じ木だとわかりました。それも群生地である分流域でも限られた場所だということが
明らかになりました」
(ホタルが飛び交うのはどんな条件の日?)
「雨が降った後とかのムッとする暖かい夜とかですね。夜8時以降がたくさん観られます」
●たけべホタルマップ
@吉田 竹枝小学校前旭川沿い
A中田桜川「台橋」を挟んで左右
B田地子阿弥陀川 たけべの森公園手前「ほたる橋」
C川口誕生寺川と旭川合流地「高砂橋」
D鶴田滝谷川 角石谷新屋(大東電機工業)
最後に佐藤さんからホタル観賞を実施するに於いての提言
「ホタル観賞を実施する上で重要な課題があります。それは人が川に近づきやすくする為の整備とホタルの生息環境の保全をどのように折り合いをつけるかです。
川辺の草や木々をどこまで伐採し残すか。そのためにはホタルの生態や生活史を知り、その実態を現場で確認することが大切です。継続した調査をするとともに、
ホタルの生息環境の保全につながる旭川の保全管理計画が望まれます」
*追記
今や日本各地で観光目的にホタルが人の手で放たれ演出されてる状況。それに対し佐藤さんの次の言葉が心に残ります。
「そんなにいっぱい飛んでなくても、1つ、2つ、スーッと通るのを見るのも風情があるよ」
一期一会、「蝉、三日、ほたる十日の命なり」(取材・三宅美恵子)
(参考文献)
「ふるさとを伝えたい」2016活動報告書編集委員会
「岡山市のホタルマップ」(岡山市環境保全課作成)
写真提供:佐藤康彦さん
建部町グーグルマップ
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