赤枝 郁郎(いくろう) 大正12年東京に生まれる
4歳の時、父親の実家、岡山に戻り岡山大学医学専門部を卒業。
広島通信病院勤務。応召、終戦。原爆治療に従事。
岡山大学より医学博士号を受ける。山陽放送の
全国初のラジオドクター、週刊誌、雑誌、新聞にエッセーを掲載。
その後、仏門に帰依し草庵にて泥仏を制作。
チャリティ寄金で教育賞を制定。NHK深夜番「心のエッセイ」で特選。
心臓病センター榊原病院顧問。
平成22年没。87歳。
前回もお伝えしたように現在ある「TAKEBEおもちゃの宿」は平成13年に旧施設より収蔵品が移設されたものだ。
その数5000点という膨大さゆえに全品が展示されているわけではないが、地方ごとに並べられおよそ800点が観賞できる。
作られた由来や歴史はまちまちだが、主に子どもの成長を祝ったり健康長寿、豊作祈願といった人の一生における、
様々な願いを託したものが多い。赤枝先生の収集品は郷土玩具では比較的新しいものだが、それでもその種類の多さには目を見張る。
項目を上げても「張子」「こけし」「土人形」「竹人形」「面」「藁細工」「ぬいぐるみ」
「凧」「駒」「面子」「絵馬」・・・地域によって、同じテーマであっても図案がまるで異なる。
また、同一の作品でも手作りゆえ、すべて表情が違うのも特徴。
こうして考えると玩具収集の楽しみは、ただ単に地域が異なる面白さだけでなく、製作者の
ぬくもりの違いに触れられることにあるように思える。語源は「手にもってあそぶ」から「おもちゃ」になったとか。
今回はこの貴重なコレクションの中から地元岡山の玩具、来年の干支「犬」のいくつかをご紹介。
あなたも”手では触れない(注意)”ので、近くでまじまじと見てお愉しみあれ。(写真上 伏見人形)
郷土玩具の辞典を調べると岡山は郷土玩具が少ない県らしい。確かに掲載も「津山の土人形」「成羽のうわはん人形」「倉敷張子」「吉備津こま犬」の4つ程で、
お隣、広島、鳥取では10を数える。と言っても岡山には「桃太郎」という確固たる玩具キャラクターが存在する。
桃太郎の話の中の「吉備団子」、そしてお供の「猿」「犬」「キジ」。ものの本によると、どうやらこれらは吉備津神社とつながりがあるとのこと。
吉備津神社で授与される「こま犬」が桃太郎に従った犬かどうかはわからないが、正義の味方、厄難防ぐお守りとして愛されていることは確か。
岡山を代表する街、倉敷の玩具から「素隠居(すいんきょ)」
市内、鶴形山にある阿智神社の祭りでジジババの面をかぶった若者がウチワを持って人を叩いて歩く。ユーモアのある面が人気だが
人形版も。
県北、津山から「吉備牛」以前、県北部では労役牛を南部に貸し出していた。
出稼ぎに行く牛を着飾って見送った習慣を模したもの。
県中の有漢から。「コトコト馬」新年10日頃、夜、顔を隠して藁の馬を持ち、人の家に行き「コトコト」と戸を叩き、
馬を置いた。家のものは「いい馬が来た」とお礼を差し出し、翌日、田に馬を奉納した。
現在、この他に岡山県内80点の玩具を展示中で郷土の文化の豊かさに触れられる。(写真左「吉備津こま犬」、右「倉敷 昇り猿」)
新年は戌年。犬を題材にした玩具は数多い。張子、土人形、木彫り、土鈴、ぬいぐるみ、作られ方も多彩。 赤枝先生の収集リストには80点ほどの「犬」名が見つかる。今回は現在展示中の作品から味わいの違う張子、土人形を 中心にとくとご覧あれ。
◎下記文献を図書館で借りて読むと更に面白さ倍増まちがいなし。
*参考文献
「岡山のおもちゃ」吉永義光著(岡山文庫)
「全国郷土玩具ガイド」畑野栄三著(オクターブ)
「日本郷土玩具事典」西沢笛敏著(岩崎美術社)
「太陽」臨時増刊号NO228
「郷土玩具事典」斎藤良輔編(東京堂出版)
「伝統の郷土玩具」(主婦の友社)
*資料提供 岡山市環境学習センター「めだかの学校」
(取材・写真 三宅 優)
◎「平成三十年 十二支と干支の戌(犬)」展示中
(休館日)毎週火曜日・年末年始
(開館時間)午前9時30分〜午後5時
<入館料>
(大人)300円 (子ども中学生まで)100円 (小学生以下は無料)
<アクセス>
JR津山線 福渡駅下車 徒歩25分
車/国道53号大田交差点から5分
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<住所>
〒709-3145 岡山市北区建部町建部上609
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