小さな経験を活かし、次の有事に備える、このことが被害を軽減する手立てとなる。今年8月のお盆中を襲った記録的長雨、
西日本だけでなく中部、東北まで広い範囲で被害をもたらした。幸いにして建部町では何ごともなく過ぎてくれたが、まだ台風シーズンは続き予断を許さない。
今回、岡山市内や県内各地でも多くの避難指示が出され、町内においても5カ所の避難所が開設されたが、その中の記者がたずさわった福渡地区を例に振り返ってみたい。
(レポート 三宅 優)
1・経過の流れ
(8月13日金曜日)
08:14 福渡町内会長より避難所開設準備の必要性が役員に提言される
10:00 防災団長、副団長2名にて検討。午後3時まで様子を見た上で午後3時以降、開設を予定
11:00 公民館長に本日午後3時以降に自主開設に入る可能性があることを伝える
12:00 雨雲が消え小康に入ったとの情報
15:00 雨雲も消え、本日開設はしないことと決定 ダム放流量580t
17:00 建部中学に避難所開設
〜 福渡観測所 8/12、13日累計雨量95mm建部町に「避難準備情報 レベル3発令」
(8月14日土曜日)
03:50 流入量増大、放流量650t
06:28 消防団役員より避難所開設の要望
07:00 防災団長、副団長2名にて開設を決定 800t越える、福渡観測所 累積雨量153m
〜 土砂災の危険によりゼンセン(友愛の丘)の開設の必要の有無を当該自治会と協議
08:00 コミュニティより防災備品の積み込み 放流量870t
08:30 公民館にて自主開設の準備 建部町に避難指示発令 レベル4(土砂災害)
〜 しあわせ橋流失の可能性高まる
09:00 「福渡みんなの防災団本部」及び避難所開設(団長、副団長2名、役員1名) ダム1100t放流
〜 当該自治会よりゼンセンに避難所設営の依頼、自治会にて開設、2名が避難。
〜 市より2名の職員が公民館に派遣される
12:00 公民館への避難者はなし。ゼンセン避難者は家族の迎えで帰宅。
〜 放流量1000t越え続く 1家族4名が避難。大塚県議、視察
17:00 町内より6家族10名が避難 森田市議、視察
〜 子ども連れ家族を2階図書室、その他年配者を3階和室に振分け。消防団役員1名が消防棟待機
20:00 市職員2名が交代職員と代わる。本部役員も交代で代わる。避難者1名が親族宅に避難するため退所
00:00 流入量1100t越え、放流量1000t越え続く
(8月15日日曜日)
03:00 雨は小康状態に入る
07:00 避難者、雨の小康状態を捉え、帰宅を決定。 放流量1000t下回る
08:00 当該自治会にてゼンセンの設営撤去
10:00 本部閉設、避難所閉設決定。市職員退所、撤収作業
2・避難所開設作業の流れ
*公民館1階玄関ロビー及び北側入口に受付テーブル設置
「受付」 「消毒のお願い」表示
「記入名簿」筆記用具 マジック 名札テープ 傘番号 消毒液 検温器の設置
エレベーター前、会場入り口前に誘導表示
*休息用備品搬入
マット40組 座布団30枚 靴用ビニール袋 水、各人数分
施設内備えつけ椅子4脚 紙コップ インスタントコーヒー マドラー 砂糖
支所より非常用の毛布、水、20組
3・避難者受入れの流れ
*車にて北側入り口前まで進入、荷物、同乗者を下ろす
*マスクの依頼・手の消毒・検温
*名簿記入「名前・町名番地・入所時間・傘番号・体温」
*会場誘導
*座布団、毛布、イス、水、靴袋の支給
4・避難時の対応
*トイレの場所確認
*要配慮者から場所決め(入り口近く) 家族ごとに間を開け配置
*就寝時の照明の明るさ、空調の強弱の調整
5・閉設の流れ
*防災役員、消防団、市職員の意見を聞き決定
*備品の撤収
6・結果として
○土砂災害(レベル4)に伴う公民館への避難者は無し、ゼンセンへ2名
○福渡地内において、土砂崩れ等の被害報告は無し
課題点(ランダムに)
○避難のタイミングが夕方に集中。早め早めの避難の徹底が必要
○体調の悪いお年寄りの避難をどうするか
○ペット同伴で車中泊をされた方を他の施設を充てるなど対応すべきか
○土砂災の避難のタイミングをどう取り決めるか
○本部団員が詰めるローテーションを分担制にする
夜間は市職員に委ね、団員は帰宅する
〇避難場所が分散した場合の本部要員の不足
○避難所内にお年寄り用のイスが適当分必要
○休息時に必要な自分用タオルケット、枕、等の持参を勧める
○トイレに行く際のスリッパが必要
〇非常用水500mlペットボトルを支給されたが常温の水は飲みたがらなかった
○各部屋にポットと茶道具があるといい(下まで行くのが手間)
〇マスクをして就寝するのがつらい
○定期的に換気の必要性
〇靴を履く所にイスが必要
まとめとして
今回の豪雨は気象庁を始めニュースでも先に危険性が伝えられ、対応する側も早めの行動がとれた。お盆休みであったことも幸いし、家族と連絡を取り合うタイムラグがなく、即、行動に移すことができた。
避難側としては、そのタイミングがもっとも頭を悩ます点だが、避難訓練と捉えることで声掛けを行った。結果として避難の段取り、避難所での実際を経験することで次への準備、心づもりができ、強い地域づくりへの一歩となった。
この小例が他の地域での参考になれば幸いである。
*追記:避難者(グルメレポーター・三宅美恵子)の感想
我が家は市のハザードマップで土砂災の危険区域、この時期、裏山から流れ落ちる水は半端ではない。今回、実際避難をし、その中での感想を述べる。
避難リュックに非常食の乾パン、カップ麺は詰めているものの、前日からの雨降りで避難時を考えて寝不足ぎみ、胃が休まらず、やっぱりウメボシにノリむすびが体に優しいかな。
普段、食べ慣れたものを持参するのが良さそう。水は薬を飲むときに必要だけど、200ml紙パック製の飲みきりサイズの野菜ジュースが何本かあるといいと思った。軽くて賞味期限が3カ月くらいあるから、普段から買い置きすると良い。
また広い体育館みたいな所だったら、小さなテント(大きなテントは回りに迷惑になる)があると安心して寝れそう。皆、本能的に壁を背にしたがるので、あらかじめレイアウトを決めておければ、トラブルを減少できそう。
(編集・写真 三宅 優)