市街地にあって建部にないもの。ショッピングモール、映画館、ゲームセンター、美術館、本屋、靴屋、マクドナルド、大学、高校・・・。では、建部にあって街にないもの。温泉、川、山、空、田、畑、土、木々、牧場、魚、虫、鳥、ヤギ、猪・・・大声で話せる家。
今年の1月に放映されたNHK国際放送の「瀬戸内〜鳥取めぐり」で、福渡駅に降り立ったカナダ人レポーターが開口一番に放った「ノーバディヒヤー」(だれもいない)そして「グレート!」(素晴らしい!)の歓喜の言葉。
人と出会わないことの新鮮さや、自然を独占することの贅沢さを物語っていた。
街は田舎に当たり前にあるものを失うことで成り立ち、田舎も街にあるものを手に入れていないことで成り立っている。どちらが上位か。
ヨーロッパの先進国を例に取ると、田舎へ住むことが豊かさのシンボルとされている。
そして間違いなく近い将来の日本の田舎も、その潜在的な豊かさが評価されて行くだろう。
そこまで価値観の変化を待たなくても、互いが補完することに意味があると捉えれば、我々が街の人たちに供給できるメニューは数多いのでは?
今回は今年で10周年になる「里山建部」の活動、また建部のローカル性を活かしたいくつかの試みについて取りあげ、まだまだ発展可能な田舎の魅力について考えたい。
(報告・三宅 優)(写真・勝部 公平)
「里山建部」の活動内容は大きく分けて3つ。
1つは「里山の保全活動」間伐の伐採、下草刈り、山道の整備など山をきれいにする活動。
2つ目は「山の資源を活かす活動」シイタケ栽培、炭焼き、山菜採りなど。
3つ目は「里山交流体験活動」地域の人たち及び、市街の人たちに里山とのふれあいの場を提供する。
では昨年を例に、どういった活動が行われたかをあらためて見てみよう。(尚、昨年は台風の影響で7・8月は休み)
<保全活動>
毎月に1回 山の清掃
2月〜3月 原木伐採
4月 植栽
5月 池周辺草刈
9月 下草刈り
10月 マキ小屋づくり
11月 炭窯屋根補修
12月 原木伐採
<資源活用の活動>
1月 シイタケ原木づくり・炭窯出し
2月 炭焼き原木づくり〜炭焼き〜マキ割り
3月 シイタケ菌打ち
4月 炭出し〜山菜採り
5月 炭焼き
11月 炭焼き
<体験交流活動>
1月 新年交流会
2月「めだかの学校」炭焼き体験
3月 里山祭り
4月「めだかの学校」タケノコ掘り
6月「代みて祭り」交流会
11月「鎌あげ祭り」交流会
11月「めだかの学校」里山ウォーク
体験交流活動には里山を地域住民との交流の場にする目的と街中の人たちに対し自然との触れ合いを提供するの2つがある。今、この2点目の活動が注目を集めている。
地元の者にとっては何ら魅力のない自然。それが森や川、澄んだ空気を失った都会の人間にとって得難いモノとなる。里山活動10年を迎えた今、変わってきた人々の”シアワセ感”、インターネット全盛となった現代だからこそ、自然、そして生身のモノに触れたい。
里山は旧来の第一次産業の地から、第四次産業の可能性へと変わりつつある。
<1の動き>
「めだかの学校」が主催する建部町内での里山ウォーク、川遊び、サマースクール、各種の野外体験、また、
「旭川かいぼり調査」などのイベントに昨今、定員オーバーの人気。
<2の動き>
「建部体験ツアー」の試み。これまで個別に行ってきた、いくつかの体験活動(多自枯鴨神社で行われる体験イベント、たけべ古道散策、ジビエ研究所ソーセージ作りなど)を建部八幡温泉とコラボする案が進んでいる。ただ建部にあるものをあるがままで繋げ、新たなアミューズメントに仕立てる。
そのために、若い人を中心とした実行チームが検討されている。
昨年、開封された30年前のタイムカプセル、中に書かれていたメッセージ。
「建部町は(釣りと温泉と桜の町として・・・)30年後、どんなにか繁栄していることでしょう・・・」
それがなにゆえ、実現しなかったか?答えは箱物を作り、観光の目玉とするような、他所と代り映えしない従来型の施策をとったことにあるのでは。
新しい物をつくり出すのではなく、今ある良いモノを育て、磨き、つなげて、まったく新しいいシーンを作り上げる、創造力こそが我々の生き残る道だと言える。