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建部町公民館
  

特集「建部町公民館」

建部に公民館あり、その役割と意義を考える 2018年4月発信


 岡山市と合併後では恐らく最大のイベントとなった今年2月に催された「タイムカプセル開封式」。 若者たちの手作りのアイデアが多くの参加者に新鮮なイメージを与えた。
 その中でも高校生の安田湧海さんと中学生による「繋ぎ」と題したプレゼンテーションは若者たちの郷土に対する思いと 未来への可能性を明示してくれた。
 この企画は主体となった「たけべおこし」はもちろん、建部中学校と岡山のNPO法人「だっぴ」 その「だっぴ」の体験授業に参加した安田さんが中心となって進められた。そして、これらをコーディネートしたのが建部町公民館だった。
 昨年、このNPOと中学生、地元の人とで語り合う体験授業を公民館が企画し成功裏に終えていた、そのことがあっての今回であった。 溯のぼってみれば、この「タイムカプセル」の主催者である「たけべおこしプロジェクト」の核となる勉強会「未来塾」を立ち上げたのも 公民館である。”陰の立役者”である建部町公民館、そこで長く職員として「地域住民の学びや育ち」に関わって来た入野曜子さんに聞いた。

NPO法人「だっぴ」岡山を中心に人とのつながりの中で若者が自分らしく生きれる社会を求めて活動を展開。


(取材・写真 三宅優)


入野曜子さんの略歴(平成30年3月現在)

 入野曜子(36歳)
 岡山市の公民館職員として15年のキャリアを持つ。建部町公民館勤務。社会教育主事。


建部町公民館 「昨年末に建中で開かれた、NPO法人”だっぴ”の授業では年齢・性別・肩書を超えて中学生と大人がテーマに沿って語り合うという点で新しい建部のシーンを垣間見ました。 企画に当たられた経緯について教えてください」

「そもそもは中学校が教育委員会の授業で申し込んでいたんです。普通、学校とNPOとでやって学校内で完結なんですが、地域の人に入って欲しいということで公民館に相談があったわけです。そこで半分は建部の大人に入ってもらうことを前提に人選を決め、提案をしました。 内容については私とNPOの方とで進め、大人を交えた事前の打ち合わせも2回やりました。

建部町公民館  結果はスムーズな進行と活発な話し合いが持たれたと思います。振り返りもやりましたが、大人の人にとっても有意義な時間だったと。 また企画したNPOも今回のように公民館が加わるケースはなかったみたいで、新しい可能性が拡がったのだと思います」

「そのあと、それだけで終わらせずに、さらに”たけべ未来サミット”を開きましたね」

建部町公民館  「この”だっぴ”と関わって、中学2年生の目が未来に向かっている、これを活かさない手はないと思いました。 ちょうど、”たけべおこし”の雨宮さんがタイムカプセル開封式で”子ども会議”をやりたいと言っていたので、それと合わせたらどうだろう。 学校に行って教頭先生とお話しすると、ESD授業としてやりましょうと言って下さりました。中2の教室に出向いて”あなたたちの思いを伝えてほしい”と訴えました(笑)。 そうしたら冬休み中なのに、25人もの生徒が参加してくれたんです。2回目は28人も。うれしかったですね」

建部町公民館 「そしてあのタイムカプセル開封式での安田君たちのの”繋ぎ”というプレゼンテーションになったわけですね。はっきり言って、あのメッセージがなければ、ただの関係者を招いての過去を懐かしむセレモニーで終わった」

 「中2の提言というかたちで発表するのに、誰か出てみない?って聞いたら、”私、やりたい”って、夏の”お化け屋敷”に来てくれた子と 公民館で職場体験した子で、みんな公民館と関わってくれてた、それもうれしかったです」

建部町公民館 「そもそも、この実行部隊となった”たけべおこし”を完全にバックアップして ”未来塾”を立ち上げたのも公民館ですよね。その辺の時代の読みというか、どういう発想でそうなったのですか」

 「未来塾を立ち上げる1年前から考えていたのですが、地域のお年寄りから”若い人がいない・・・”とよく聞かされていて、 じゃあ、そんな所に若い人のグループがあったら面白いのではと思いました。”タネピリカ”の前例もあったので。
 そこへに地元出身で青年会をやっている延江さんが着任して、二人で話しがどんどん膨らんでいきました。 偶然、県の教育委員会活性化事業の募集があって、それに申し込もうと。
 2014年5月に会を発足して、仲間を増やす意味で”未来塾”を立ち上げました。 私としては社会教育という視点をそこに入れたかったのです」


建部町公民館 「数々、縁の下の力持ち的役割をしてきた建部町公民館ですが、今一番の課題は何ですか」

 「岡山市の公民館には社会教育専門の職員が大勢いて、ESD世界会議を開くだけの力があります。それが、この4月には中央公民館がなくなり、 しだいに市民サービスセンター化しているのが心配です。
 これまでに、職員は社会教育の研修を積み上げてきました。それが活かされなくなって、本来の目的が薄らぐのではと」

「今後、やっていきたい企画とか課題への取組みとかを教えてください」

 「もう、いっぱいあるのですが(笑)。一つは中学校と公民館で大人の”たけべ部”を設けて、公民館版”だっぴ”ができないか。
 もう一つ、先日、コスタリカの映画の上映会で海外青年協力隊に行っていた森山さんに話を聞く機会があったのですが、 建部には世界と関わりのある人が他にもいるのでは。だったら、子どもたちとその方たちを繋ぐことで、世界視点での学びの場が生まれないかなって。
 それと、これは少し動き出しているのですが、”フードバンク”を建部につくれないかと考えています。後、”空き家”の活用するプロジェクトとかも。 多分、公民館の役割って、少数派であったり、手をこまねいて見ないでいることに、だからこそ公民館が加わって行く、 それが公民館としての役割かなあって感じています」

 「ありがとうございました」



着任して3年、今ではすっかり建部の名物館長としてご活躍の安部欽也さん。
 これまでを振り返りながらお話をお聞きした。

 安部欽也さんの略歴(平成30年3月現在)
 安部欽也(64歳)
 岡山市の中学校校長を退任後、3年前に建部町公民館館長として赴任。


建部町公民館 「今年で3年の任期を終えるわけですが、1年ごとに振り返ってお聞きしたいのですが。1年目はどのようでしたか」

 「そうですね、当初、学校を退職してすぐに公民館のお話しを頂いて、それまでは生徒や父兄を通じて地域と接することが多かったので、直接、触れ合うことができる 、それもいいなあと思いました。建部については津山に通っていたので、ある程度、理解していました。
 着任してのスタンスとしては、すでに現場の人たちが今やっていることを応援することを考えていました。 丁度、たけべおこしプロジェクトの始まりの頃で、若い人の活動を見てそこからいろんなことを学ぶことができました。 また広い建部の中、鶴田や他の地域に行ったりして人と地理を知ったのが1年目ですね」

建部町公民館 「2年目からは専門の音楽を活かした活動を積極的にされはじめましたが、その辺の取組みのきっかけは何ですか」

 「学校の教師をしていたことは知られていても、音楽の先生だということはご存じない。 それで、聞きつけた方から、じゃあ先生、何かやってと言われて始めたのが最初です。 地域の集まりや、春の里山祭り、吉田のれんげ祭りにも参加させていただきました。
 秋の文化祭では岡山の吹奏楽団を呼んで来ることができました。そんな中で、町の人から 公民館に野菜や手作りのおいしいものを届けてくださる優しさに触れられる場面に 出会えることが増えてきました」

「そして、3年目ですが、文化祭も今までになく盛り上がりました。クリスマスコンサートも他館では、まず観られない本格的な演奏会でした。 安部ワールドの全開と言った感がありましたが」

建部町公民館  「いえいえ。確かに今年は”タイムカプセル開封式”という大きな催しに関われたことで、3年目の役割の節目ができた気がします。 これも、すべてスタッフや地域の方のおかげで実現できたわけで、大変感謝いたしております」

「3年の公民館長として建部と関わっての感想としてはいかがでしたか」

 「ここに来るまでは、学校の子どもたちが見ていた地域という視点だったのですが、直接、地域と接することで、 それまでと見る角度が違い、私にとっては新鮮な3年だったと思います。自分にとってもいい勉強になったと感じています」

「このあと、どのような道を歩まれようとお考えですか、それと建部との関りは続けられますか」

 「そうですね、音楽が専門なので、この分野で自分を表現するのに適した仕事で恩返しをしていきたいですね。 建部とはこれからも、文化祭の音楽をセットするといった形で繋がっていけたらうれしいですね」

「ありがとうございました、そしてお疲れさまでした」

(記者感想)

 以前、流行った「開いててよかった・・・」という24時間営業のコンビニのコマーシャルではないが、それに倣って言うと、 「あってほんとによかった・・・」それが、この町に移り住んでからの素直な感想。
 だれも知り合いのない地で生活を始めた者にとって、これからどうやって地域とつながっていくか。 そんな時、公民館から誘いを受けた。建部に新しくやって来た人と地元の人とをつなぐ「スローライフ講座」を開きたい。
 それから今日まで、どれだけ多くの人たちとこの公民館を通じて知り合い、学んで来ただろう。 今回は一般に受け止められている”貸し施設”としての公民館ではなく、本来の目的である人と人を結びつけ、 住民の学びをもとに様々な活動を援助し発展させる教育施設としての活動に焦点を当てた。
 取材を終え、あらためてこの公民館の存在の大きさに気づかされた。おそらく、この4月からは新しい職員体制がスタートするのだろうが、 引き続き私たちの公民館として盛り立てていきたい。



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