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空き家を活かす

左から: ドレミファミリア」2009年移住・「野のカフェ」2008年移住
石窯ぱん屋nico」2007年移住・「ピッツェリア マル屋」2019年新規開店

  

特集「がんばれ!たけべの未来づくり」

 〜空き家の活用は地域の活性化〜建部町で新たな取組み   2020年1月1日発信

 現在、建部町内で空き家となっている数は100軒を優に超えると推定される。当然、合併時7000人だった人口は5600人に減少。 地域の活力が失われる大きな原因となっている。
 これに対する行政の取組みとしては県では「空き家等対策推進協議会」、市では「建築指導課(空き家対策推進室)」を設け補助制度を含む支援情報の提供、相談に応じている。
 町内においては、これまで過疎化が著しい一部地区において対策が練られた経緯があるが、具体的な解決策を生み出せていないのが現状。 悶々とした時間だけが過ぎてきた。一方、他県に限らず県内でも、空き家を活かす取組みで成果を出している地域が複数ある。
 そんな中、建部町内でも新たな取り組みが動き出した。
 昨年12月中旬、町内で活動する「たけべおこし」、建部町の物産販売を広める「建部町観光協会」、 福島の子どもたちに県内で保養してもらう活動をする「子ども未来・愛ネットワーク」が共催して始まった「建部町の空き家活用 意見交換会」
 これまでと違うのは「空き家」を基軸に様々な立場の人、問題を抱える地区の区長、ビジネスとして取り組む人、実際に活用している人らが集まった点。
 では、その第1回意見交換会のあらましを報告。

  *当日の出席者(順不同)

大塚愛さん(県議会議員)福島さん(旭木材)松下さん(建築士)中里さん(えんつむプロジェクト)中島さん(こらーれ)藤原さん(川口区長)平田さん(たけべおこし)垣本さん(建部町観光協会)岸さん(キシテック) 本田さん(田地子区長)井口さん(建部上)江田さん(シオンホール)大塚尚幹さん(建築士)杉山さん(公民館長)入野さん(公民館)勝部さん(里山建部)計17名  
(取材・写真 三宅 優)


第1部 空き家と活用の状況(以下・敬称略) 

未来づくり推進 (進行:大塚愛)「本日は建部町における空き家の活用についての意見交換会にお集まりいただきありがとうございます。 空き家の増加は建部町におきましても大きな課題となっております。その空き家をこれからどのように活かし地域の活性化につなげるか、 今日、ご参加いただいた様々な立場の方の幅広い視点でのご意見をお聞かせ願えればと思います」

建部・福渡・竹枝学区の空き家の状況

 (大塚愛)「はじめに、今日来られている方の地区のおおよその現状について お話いただけますか」
 (藤原)「川口地区は全戸数226軒ですが、軒数の減少はそれほど変わらないで推移しています。そのうち空き家は25軒、住める家としては2軒ほど。最近では2軒夫婦で入られました」
 (井口)「建部上は全戸190軒ほど、うち今福団地含めて12〜13軒ほど」
 (勝部)「富沢では100軒中、2軒が空き家です」
 (本田)「田地子は40数件ですが2軒の空き家です」
 (記者・三宅)「福渡は60余軒が空き家と聞いています。でも最近4軒(1軒は第一生命ビルに入ったピッツェリアマル屋)の入居があり、うち2軒は他所から移住された方です」
 (大塚)「竹枝学区で言うと150軒ほどの中、空き家は数軒で、すぐ住める家はない状況。土師方は60軒ですが、子育て世代の出入りが多く割と埋まっているが、 今後、空いてくる家は結構あると思います。小倉は50軒中、3〜4軒の使えそうな空き家が、大田は結構、空き家は埋まっている現状です」
 (藤原)「今日は来られていませんが、鶴田地区などは相当、空き家が深刻化していると聞いています。建部で右肩下がりに減少が進んでいるのは、福渡地区と鶴田地区ではないでしょうか」


 出席者に聞く、さまざまな立場からの意見

未来づくり推進  (大塚愛)「こういった状況ですが現状をどのようにお考えでしょうか」
 (垣本)「空き家になった家というのは、施設に入られて亡くなられて情報が取れないといった例がままあると思う」
 (藤原)「親子関係が疎遠になって、相談しようにもしにくいと言ったこともあります」
 (平田)「空き家になぜなるかと言うと、相続ができていないからだと思います。でも、これって遺言書を一つ書いていたら解決する問題なのです」
   (大塚愛)「福島さんは不動産業の専門家としての空き家の状況についてお話をいただけますか」
 (福島)「空き家を扱う専門家から言いますと、管理が良い方から売れていきます。すぐ住めるからです。でも管理の良し悪しは価格には反映しません。それと、売ることを考えるなら本職に任せるのが良いと思います、情報発信力がまったく違うからです。大垪和地区など良い所は地元で発信しています、それも住民の25%にあたる移住者が自分たちでどんどん発信している、今では町内の区長、副区長をするまでになっています」

 (大塚愛)「中里さんは御津五城の古民家再生を手掛けていらっしゃいますが、どういった経緯ですか」
 (中里)「東京の品川区でFLC−designというIT関連の会社をやっていたのですが、新しい仕事環境を求めて2018年に御津新庄に会社を移転しました。そこに来るまでに各地を探したのですが、五城地区がバリの棚田に似ていた縁で決めました。今は地域のコミュニケーションの風穴を開いて、隣の古民家を泊まれる家にしようかなと進めています。今度、岡山市の未来事業の認定を受けて”縁をつむぐ家再生プロジェクト”を立ち上げました」

未来づくり推進  (大塚愛)「江田さんも新しく民泊事業をお考えとお聞きしましたが」
 (江田)「ええ、福渡に民泊できる家を作りたいと考えています。僕はもともと旅行業をやりたくて、 それも外国の人が日本に来る仕事をしたいと。外国の人が建部に来て温泉に入ってゴルフをして、それを パッケージツアーにしてそのまま外国の旅行会社に販売する。岡山に来てもらい日本を回る、そんな構想です。それと、うちは葬祭業(シオンホール)をやっているんで、 よく建部は泊るところがないと言われるんです、そんなところから宿泊施設がもっとあればいいなと考えています」

 (勝部)「それはいいですね、鮎釣りや、里山で炭焼き体験なんかも組み入れたらもっと広がりますね」
 (井口)「まったく、僕らにはそんな発想は思いつきません(笑)」
  (福島)「先日、角石谷の山の上のまったく住めない家があって、持ち主もタダでもいいと言ったのですが、それが売れました。買主は自分で手を入れて家族で楽しむ場所にするということです。まったく住めなくても、人によってそこに価値を見出す人もいるわけです。今は目的をもって来る人が多く、良い場所はピンポイントで狙ってきます。それと10年前は営農をしたい人が多かったのですが、震災後は仕事を持たないで来る人が増えて、地域で就職の紹介をするなどに取り組んでいる
上山棚田のような例もあります。実は仕事は選ばなければ、どこにでもいっぱいあるのです」

未来づくり推進  (大塚愛)「岸さんは水道屋さんとして空き家の改築とかにたずさわっておられますね」
 (岸)「ええ、今は吉備中央町でやっているんですが、やはり土地付きが気に入って山や土地を求める人がいるんだとわかりました」
 (中里)「その辺は受入れる側でも、だれでも来てほしいわけではなく、きちっと発信していくことも大事だと思います」
 (勝部)「私が思うに結局、そのためにも魅力ある地域づくりがまず重要じゃないでしょうか、交流のある町づくりを進めることが大事だと考えます」
(平田)「そうですね、ホントにそう感じます」
 (松下)「僕もその通りだと、地域がやっぱり魅力がないと始まらないと思います」

 (入野)「そのことにつきまして、今、平田さんを中心に”たけべおこし”で、建部の魅力を伝える新しい冊子を作る予定です。建部の自然やお祭り、おいしいお店などを写真を使って伝えていきます。表紙にはツバメを描いています。将来、子どもたちがツバメのようにここを飛立っても、やがて帰って来てほしい、そんな願いを込めています。1部100円で販売しますので、その際はよろしくお願いします」

 (大塚愛)「貴重なご意見をいただきありがとうございます」


 第2部 今後の取り組み 

(大塚愛)「第2部として具体的に建部町の空き家状況を把握し、今後の利活用を考えるきっかけとしたいと考えるのですがいかがでしょうか」

 以下、空き家対策モデル地区事業の事例をもとに「空き家マップの作り方」の検討。

未来づくり推進  ー方法ー
 @ゼンリン地図、都市計画図などをできるだけ大きく町内単位でコピーする
 Aそこにモデル地区の事例を参考に空き家の場所、住める難易度、使える可能性等で色分け
 Bその空き家についての情報(持ち主名、経過年数など)を記入
 *記入に際しては個人情報を決して口外しないことと、漏洩させないよう地図とは別々に管理する

 (今後の日程)
 @令和2年1月中旬にマップを用意
 A2月中に作成ワークの検討会を行う

 以上のような結果が得られた。


 (記者コメント)
 これまで町内でも2、3の「空き家検討会」が組まれたが、いずれも進展が見られなかった。今回、行われた意見交換会がこれからどう広がっていくか定かではないが、実際に空き家と関わる人たちの参加により、具体的な対策へのステップが見えてきた感がある。

未来づくり推進  先日、 「たけべ八幡温泉」の前を通ると若い家族連れが足湯に浸かっていた。聞きなれない言葉なのでどこからか聞くと台湾とのこと、岡山空港から一番近い温泉に来たそうだ。
 どこに泊まってるか尋ねると「ミンパク」、マルナカの近くの民泊に泊まり「ベリーナイス!(最高!)」との返事。
 逆に「このへんでおいしい店はないか」との質問。いくつか教えると、「ノーノー、ワショク(和食)」と答え、それも親子丼を食べたいという。
 台湾で日本の親子丼が脚光を浴びているのかどうか、とにかく知らないのは日本人、いや建部人だけで、すぐ目の前に外国からの旅行客が到着して、 ここを楽しもうとしているのに相変わらず「ここはなんにもない」のあきらめ顔。しかし、そんな嘆きを吹き飛ばすことができるかも・・・。
 それには町民一体となってここを「ウェルカムな町」にしていくこと。空き家が足りないと悲鳴を上げる日が必ずやって来る、今がその最大のチャンス!  


 (取材・写真 三宅 優)






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