前回に引き続きシリーズ第3弾。趣味の多さとその徹底した凝り方ではピカ一の善木治正さん。
鮎釣り仲間が認める釣り名人、岡田久男さん。お二人を取材しました。
(取材 勝部公平)
*取材させていただいた方々のお名前と略歴(敬称略)
善木 治正(はるまさ)
昭和19年生まれ NTT勤務後、ログハウス造り、陶芸、釣り等あらゆる趣味に没頭の日々。久具在住。
岡田 久男(ひさお)
昭和16年生まれ フランスベッドを退職後、夏は鮎釣り、冬はスキー、地域活動にも人力。福渡在住。
この日、久具の高台にあるご自宅にお伺いすると、明日、山陰へ釣りに行くために、
釣り針へ糸を巻きつける作業をしているところでした。釣り専用の軽自動車には、海釣りの投げ竿、
さぐり用竿、川の鮎釣り用まで積まれていました。
記者が最初に善木さんとお会いしたのは三十数年も前、盆踊りの会で、
粋な男踊りをしている人がいるなと感心したのが治マーちゃん(治正さんのことを
近所のひとは愛称でこう呼びます)でした。NTTに勤めるかたわら、プライベートでは色々な趣味を追及し続けてきた人生、
御年七十三歳になってますます磨きがかかっております。
庭の一角に建つ2階建てのログハウス、定年前から退職後の生活設計をし、ログハウス造りを計画。
檜の伐採、乾燥、建具の細工まで一人で7年かけて造り上げました。今は山陽町に住むお孫さんがゲストハウスとして
楽しんでくれてるそうです。
ハウスを完成後も思いは次々に湧き、家の竹林から採った竹で自在鉤(かぎ)を作って
囲炉裏の設置、テラスの増設、そしてなんと露天風呂まで。釣りに行った帰り、鳥取の千代川などから
コツコツ石を拾ってきたそうです。まさにサミュエル・ウルマンの「青春とは人生のある時期ではなく、心の持ち方を言う」
を体現しているのです。
その後も制作意欲は衰えることなく、ピザ窯、炭窯作り、陶芸にも没頭。現在の夢は
裏山に庭園を造ることだそうです。
一年の半分近く行っている釣りの方も、山陰での海釣り、県外でのアマゴや鮎釣り、
また旭川に舟を出し、仕切り網漁をして楽しんでおられます。
実はこの川舟もお手製。廃船になった舟を譲り受け、川船用の手打ち釘を一本一本抜いて
準備。分厚い杉板を寸分の狂いもなく作り上げるのが喜びだそうです。
そんな忙しい中、県の暴力追放推進委員や
上建部の財産区議員も務めておられ、まさに忙中閑あり。
奥さんも多彩な趣味をお持ちです。
トールペイント、絵手紙、パッチワーク、木目込み人形、パン作りなど。
共通の趣味は陶芸だけ、作風もまったく異なるそうで、互いのことに干渉しないのが
生き生き人生のコツかも知れません。帰り際に倉庫を覗くとクラシックカーが2台並んでいました。1台はベンツV8、5600t。
今ではお宝の一つだそうです。きっと40年位前の治マーちゃんは建部のプレスリーかシナトラ
だったのでしょうね。
福渡の建部支所のすぐ真ん前にある日用雑貨店「岡田」。
そのご主人、岡田久男さんは津山市に生まれ、高校卒業後、
大阪のフランスベッドに入社されたそうです。
当時はまだ国産ベッドが珍しい時代、全国各地の家具屋へ製造卸販売に出かける
東西奔走の毎日だったとか。
時は東京オリンピック前の高度成長期、ベッド販売シェアの80%を占め、
ベッドと言えばフランスベッドの時代です。その後の何ごとにも精力的に打ち込む
岡田さんの生き方はこの頃に養われたものなのでしょう。
奥さんとの出会いをお聞きしました。
岡田さんのお兄さんが銀行の弓削支店に勤務され、そこで同僚だった奥様を紹介。
今の福渡の店の4人姉妹の長女だったそうです。
初め、4人も娘がいるのだから家業は誰か継ぐだろうと思っていたのですが、
結局、姉妹の皆さんは全員が福渡を離れてしまい、長女である奥様が店を
切り盛りすることになりました。ご自身は大阪、中国四国の拠点を
単身赴任で駆け回ったそうです。
さて、そんな全力疾走の岡田さんの趣味は高校時代からやっているスキー。関西に勤務時代は
伊吹山スキー場に、福渡に帰って来てからは仲間と蔵王などあちこちに
毎シーズン、滑りに行かれているそうです。
またボウリングを始めたのも早く、アメリカ製機械が町に登場し始めた頃からとのこと。
そして、定年を間近にして魅力にとりつかれたのが釣り。特に鮎、アマゴ釣りに
凝っているそうで、定年後に始められた介護用品のレンタルショップの事務所には
仲間から寄せられた魚拓が所狭しと掛けられていて、鮎シーズンにもなると
友釣り用の鮎の生簀が設置され、事務所は鮎仲間のたまり場となるそうです。
そんな岡田さん、地域活動でも積極的に役割を果たし、民生児童委員、町内会の会計、
寺の護持会の副会長、岡山南漁協副会長と、その人柄の良さからいくつもの
仕事をお願いされています。
昨日も保育園の園児たちと旭川へ鮎の放流に行かれたそうです。
八幡神社のお祭りも中心となってやって来られ、以前の写真を見ながら
「30年前はこれだけ担ぎ手がいて町ぐるみで盛り上ってた」と
懐かしそうに話されました。
今は一日忙しく懸命に過ごした後の一杯やる酒が人生最高の一時だそうです。
ドイツの詩人シラーの名言「人生は退屈すれば長く、充実すれば短い」のとおり、
日々、充実して走り抜くのが岡田さんのポリシーだと感じました。
(取材・勝部公平)