Fukuwatari
DOREMI FAMILIA
「終の棲家ノート」
都会で20数年、気ままに暮らしてきた私こと49歳”おねえちゃん”。
15年勤めた仕事に見切りをつけ、念願の田舎暮らしを決行。頼りに
するのは、畑も田圃も興味ないうちの人、59歳”おにいちゃん”。
はたして二人は「終の棲家」を得ることはできるだろうか。
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終の棲家に辿り着くまで、迷わないようにと書いた「私の希望の田舎暮らし」図。
(2011年2月14日)
スピリットフォーク
果たして、14日愛のバレンタインデーは大雪。
幾人か来てもらえそうな人に声かけしてたけど、これでは
来ても、帰れなくなる。
「ああ、困ったねえ、これじゃあ誰も来れないよ?」
「うん、まあ俺達で聴いてあげればいいよ」
夕方からいっそう吹雪が濃くなる。そうしたらガヤガヤと
車が止まった。皆、独特のスタイルのメンバーが5、6人、
シンガーと連れなって来た。
「みんな気心が知れた仲間だから、今夜は内々で
盛り上がろうよ」みずえちゃんに言われ、何か開き直った気に
なれた。「そうだね、みんなで楽しんでください」
コンサートは飛入りの外人さんが入ったりして、その通り
和気あいあいに盛り上がって終った。
ほぼ、全員がミュージシャンだったからだろう。音楽系に疎い
私には、誰もが初めて接するタイプだった。
みんなが帰ったあと、2人で「ねえ、私たち、これから
どんな方向に向かうんだろうね?」
と話し合ったのはもちろんのことだった。
大村和生 スピリットフォークコンサート
(2011年2月10日)
ワン・ラブ
毎日、薪運び。中国電力が伐採したマキの木を
60cmほどに切ってくれて裏山に置いてくれた。
それを2人で何回も往復して運ぶ。太いのはゴロゴロと
ころがして降ろす。
「もう欲を出さんでこれくらいでいいだろう、割るのは
俺なんだから」
「だめだよ、来年の分まで確保しておかなくっちゃ」
結局、薪運びは私、割るのはうちの人。
そしたら、ストーブ設置の火付け役、アーチ夫婦が
10日、「ONE LOVE」と彫った火吹きを
みやげに持ってやって来た。
「いや、実は頼みがあってな」
彼らの古くからの友人でフォークシンガーの大村カズキと
いう人がコンサート回りで岡山に来るのでその会場を
ここにしたいと言う。
いつなの?と聞くと、「14日」と言う。
「それじゃあ別を探す時間もないだろうから、うちでいいよ」
とうちのが言ってそれで決まった。
会費は1千円、でも観たことも聞いたこともないシンガー
を聴きにここまで来る人がいるのかなあ。
当のアーチたちは「大丈夫、だいじょうぶ、2人しか
いなくたって、いいんだから」と至ってのんき。
ハワイアンの時もそうだけど、こういう観客を呼ぶ催しの
苦手な私は、またもや心配が頂点に。
薪運び。火吹き「ONELOVE」
(2011年1月下旬)
ドデーン
次の日から植木鉢をカシャーン、カシャーン。山に捨ててあった
土管も拾ってきて、2つをはめたり、抜いたり。
それから今まで雨どいに使っていた煙突菅を外してきて、
組み合わせ始めた。
「よーし、おい、ストーブを運ぶぞ!」
「え?だってどこに取り付けるのよ」
「いいから、火を入れて試してみよう」
取付やエントツにものすごい費用が掛ると言われ、すっかり
諦めていた薪ストーブ。
ちゃんと燃えることを確認したうちの人、そりゃあもう一気に
ガガーッ。
アーチの家で見た日から1週間後には、思いもかけない台所の
勝手口にドデ―ンと鎮座した。
もう私はうれしくて、うれしくて「えらい、兄ちゃん!お礼に
お酒を送ります」
「あはは、発想の転換だよ、壁に穴を開けるのではなく、穴の
開いた戸を付けたんだ」
1月末、冬がだいぶ過ぎてしまったのが惜しまれるほど暖かい
楽しい日々が来た。
念願の薪ストーブ設置!
(2011年1月半ば)
アーチ
写真展は好評だ。以前来た人の誰かしらが寄ってくれる。
新しい人では、昨年シタール演奏会で踊ってたという仙人と奥さん。
呼び名が「アーチ」、奥さんは「みずえちゃん」
家に伺った。国道を脇に入った、小じんまりした住宅地の中の古民家。
猫と犬が迎えてくれた。
「わー、いいねえ、私たちもこんな家探してたんだよー」
「ええ?うちらもドレミさん家がいいなあって言ってるんよ」
「なーんだ、お互い違って見てるんだねえ」
みずえちゃんは家でとんぼ玉のアクセサリーを作り倉敷美観地区で
売っている。もう30年も道に座ってるからすごい。
アーチは木工のキーホルダーを彫っている。
”俺の遺産は太田胃酸”とか変な言葉が入れてある。うちのが
「こりゃあ、よっぽど暇じゃないと浮かばんで」
今まで一度も働いたことがないと言うからこれもすごい。
台所に薪ストーブが点けてある。どこにである煙突管が窓から外に
出てるだけ。
「ねえアーチ、エントツてこんな簡単な物で大丈夫なの?」
「何にも、心配なら煙突周りに鉢植えをかませればええ」
帰り、うちのがブツブツ一人言。やがて、
「鉢植え・・・・・、そうか!そうだ、そうなんだ!」
この事を境に私たちの田舎生活は深化へと進む。
自転車で30分。地下室もあるアーチの古民家。
(2011年1月10日)
ロングラン
新年10日。今日からロングランで平松さんの写真展「反応採集」
オープンセレモニーに、渡邊さん、エミちゃん、西村君たちも来てくれた。
みんなでワイワイ。なかでもエミちゃんの武勇伝は若い人たちの関心を
一手に。
「それでなあ、わたしはなあ、ただで東京へ行く方法を考えてなあ・・
欽ちゃんの仮装大賞に4回出場したんよー」
「ゲゲー、マジ?スゲ―エなあ、それ」
「ふんふん、それでそれで?」
・・・・・・。
・・・・・・。
帰る頃にはすっかり皆で何か面白いことをやる企画が進んでた。
「よかったねえ、年代の違う人が集まって話がはずんで」
「そうだなあ、このギャラリーの目的はそこにあるから」
幸先のいい2011年初め、われわれのロングランもここから
スタートだ。
よし、みんなでバザールをやろうやあ!
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