お正月は3が日が過ぎてしまうと、ホンマにやることがなくて暇じゃった。
男の子はコマ回しをよくやっておった。女の子はあやとり、お手玉が多かったなあ。
凧あげはどっちもしておって、近くのお店には奴だこがぶら下げられて売られておった。
最初はうまく上がらんですぐに落ちてしまうんじゃ。お父さんが
「わしが、持っておいてやるから、風の来る方向にむかって走れ」
そう言われて田んぼの中を駆けていった。糸を持つ手が後ろに引っ張られるのがわかった。
お父さんが「そら、もっと糸をゆるめて」そうしたら、グングン空へ揚がっていった。
「糸を離すなよー、離すなよー」そう言われて、いっしょうけんめい糸を握っていた。
なのに、なあ、スーッと手から力が抜けたかと思うと、凧がドンドン小さく点のようになって飛んでいった。
あの奴だこ、どこへ行ったんかなあ。