五月はなあ、今のように鯉のぼりを上げたり、子どもの日を
祝う習慣はなかったなあ。一番の楽しみは、山登りじゃった。
朝、台所で酢のいい匂いがして「ああ、今日は何かあるな」
そうして巻き寿司を持って、近所の家4〜5軒で、
すぐ裏の山の眺めの良い土手にゴザを敷いて食べるんじゃ。
それだけじゃけど、のんびりしとったわー。
子どもらは、食べるもん食べたらすぐに探検じゃ。男も女もまじって
山の上の方まで、初めての道を登っていくんじゃ。大きなほら穴を見つけて
来た者同士で「内緒にしよう」言うて、秘密の基地にするんじゃ。
次の土曜日に学校で紙が回って「ヒミツ基地にあつまれ」と書いてある。
知らない子が、こっそり後をつけてきて、ケンカになったこともあるなあ。