まだダムができる前のことだけど、
夏から秋にかけて、旭川では鮎がいっぱい
とれててねえ。川の中ほどに組んだやぐらの
上から、人が「鮎が来とるでー」って
叫んでくれるんだよ。
それで「○○の家じゃー」と言うと、
あとで持ってきてくれた。
届いた鮎はそのまま焼いて食べることも
あったけど、塩漬けにしたり、竹グシに刺して、
かまどの下のおき火で焼いて、麦わらのホギに
刺して乾かしておいたりした。
そうすると長もちしたからね。それに、
いっぱいとれたからって、昔だって、やっぱり
鮎は大変なごちそうだったんだ。
だから頭から腹わたまで、全部、食べたんだよ。
今は旭川の水も汚れて、天然のおいしいものは
いなくなったけど、それでも鮎を食べると、
そんなふうに大事に食べた頃のことを思い出すねえ。