おばあちゃん聞かせて 「たけべのお話し」
ねえねえ、おばあちゃん聞かせて、子どもの頃のたけべのお話し



 春  4月   「魚島(うおじま)の鰆(さわら)」


 この時季、お百姓はどこもてんてこ舞いだったよ。
 とくに蚕(かいこ)をやっている家では毎日、
 桑の葉を集めに行かなくてはいけなかったからね。
 それが終わったときはそりゃあ、ほっとしてたよ。
  そんな折にね、家の外から「さわらー、さわらー」って
 聞こえてくるんだよ。
  瀬戸内海の島の間を鯛や鰆が群れになって
 泳いで来るこの季節に魚の行商がやってきたんだ。
  「今日は鰆をまるごと買って食べよう!」
 そんな豪勢なお家もあってねえ。そういう時、
  「ええなあ、あそこん家は今日は魚島じゃ」と
 言ってうらやましがったんだよ。
  丸ごとでなくてもね、切り身でも並んだときは
 家族中で「うちも魚島じゃー」って喜んだもんだよ。
 

春の味





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  *このお話は地元のおばあちゃん達からお聞きした内容を基に
   平成25年に発行された「たけべのお話」(タネピリカ編集)より抜粋しています。


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