お百姓の家に嫁いできたお嫁さんは、入梅のこの日が
待ち遠しかったろうねえ。
大変だった田植えが終わると、村のお偉いさんから
休みのお触れが回るんだ。全部の家でその日は仕事を
しないんだよ。来て間もないお嫁さんは「足洗い」と
言って、数日、実家に帰ることができる。
「そりゃあ、あん時はたのしみじゃった」遠くから嫁いだ
おばあさんは未だにそう言ってるよ。
朝早く、おみやげのぼたもちと買った番傘を持って、
長い道を歩いて実家へ帰ってった。バスも電車も
なかったからねえ。
この日は各家ではお寿司や赤飯、ぼたもち、ミョウガ餅など
ごちそうを作ってくつろいだんだよ。そうそう「しろみてダコ」
と言って、よくタコをゆでて食べてたねえ。
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*このお話は地元のおばあちゃん達からお聞きした内容を基に
平成25年に発行された「たけべのお話」(タネピリカ編集)より抜粋しています。