たけべアメージングストーリー 「たけべアメージングストーリー」 作  建部 鮎太
「僕らはここから世界を変えるんだ」建部の3人の子どもたちが時空を超えた旅に出た。


    第5話  第二章「黒船」

  • *これまでのあらすじ*
     建部中学1年生の建部鮎太、妹さくら、同級生の河本温人はふとしたことから江戸時代初期にタイムスリップする。
     そこで出会った僧侶、日船や石仏泥棒の富蔵、角石村の剣の達人、竹内老翁、建部藩主、池田宗春らの力を借りながら、 彼らはしだいに自分たちの力で生きていくことに目覚めていく。
     そんな中、鮎太は「姫こ渕」で美しい姫と出会い、必ず現代にいっしょに戻ると誓う。
     さまざまな出来事を乗り越えた鮎太らは、メールの指示を受け、再びタイムトンネルに乗る。
     そして着いた所は再び江戸時代?そこで瀕死の男を見つけた3人は、近くの小屋に住む若者に助けを求める。 若者が呼んできた医者と青年を見た鮎太たちは、二人が吉岡有隣と息子、吉岡弘毅と知る。自分たちのこれまでを 伝える鮎太たち、ここでの生活がはじまる。


    *主な登場人物*
    建部 鮎太(あゆた)
    建部に住む、中学一年生の少年
    建部 さくら
    鮎太の妹、小学五年生
    河本 温人(あつと)
    鮎太の同級生
    建部 鮎一郎
    鮎太の父 岡山の大学の教授
    建部 すみれ
    鮎太の母 
    建部 鮎男 
    鮎太の祖父だが亡くなっている
    建部 桃江
    鮎一郎の母、鮎太の祖母
    楓(かえで)
    鶴田城の姫君
    黒船 
    イカサマの賭博打ち
    鮎一 
    八幡の渡しの舟頭
    桐乃 
    塩問屋の一人娘
    吉岡有隣
    福渡の名医。
    吉岡弘毅 
    有隣の三男。日本基督教の先駆者。 

  •        

―― 2――

黒船さんの傷がふさがれてきて、あとは抜糸して十日も安静にしていれば大丈夫だろうという状況になってきた。
 僕らは、その間に吉岡先生宅に移り、日中だけ世話をしに小屋に通うことにした。
 これで、がっかりしたのは鮎一さんで、鮎一さんはこれまでは、朝4時には起きて火をおこし、 僕らの朝ご飯を作って渡し場に出かけて行った。昼は一旦、戻って食事をとってまた出かけた。
 帰りも暗くなる前には小屋に着いて、みんなと夕飯をとった。
こんな生活が気に入ったのか、自分が僕らの先祖にあたると言われ責任を感じたからなのか、
「ここにいつまでもいていいんだよ、今度、皆が寝れるように広くしておくから」と言ってくれた。

 黒船さんは鮎一さんの昔からのことをよく知っているので、日中の留守の間にいろいろと聞かせてくれた。
 「あいつは、おれより相当若えのに、この福渡じゃあ誰からも一目置かれとるわ。と言うのも、小さいころから何をしても才があるけんのう。おまけに、バカがつくくれい正直もんときて、吉岡の大旦那にも気に入られた。
 それと比べりゃあ、わしなんか、鼻つまみもええとこで、まあ、嫌うに嫌われて、わしが死んだと思って喜こんどる者ばっかりじゃ。
 ところがじゃ、そうは言っても、あの鮎一がいくら世間から良う言われたとしてもじゃ、しょせんはわしらと同じ、えたひにんでぇ。
ほれた女にしてもどうしようもねえ。それが身分というもんよ」

たけべアメージングストーリー  黒船さんの話では、鮎一さんには想っている女の人がいて、女の人も同じで、でも、身分が違いすぎるので、一緒にはなれないのだとか。
 それで、思い出すのは、おじいさんの名前をずっと書いて教えてあげた時に、
 「お母さんや、おばあさんの名前も知ってるのかい」と聞かれたこと。
 いや、僕の母は「すみれ」で、おばあちゃんは「桃江」その前が「桂代」で、よくは覚えてないけど・・・、 おばあちゃんが、偶然だけど母親は皆、花か木の名前がついてるんだよって。
 その時の鮎一さんのうれしそうな顔ったらなかったな。
 僕も、楓さんのことが浮かんだ。




はたして、これから再び何が起きるのか?


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  *この物語に登場する人物や出来事は、あくまで想像上のもので実際の人物、史実とは異なります。




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