たけべアメージングストーリー 「たけべアメージングストーリー」 作  建部 鮎太
「僕らはここから世界を変えるんだ」建部の3人の子どもたちが時空を超えた旅に出た。


    第5話  第一章「黒船」

  • *これまでのあらすじ*
     建部中学1年生の建部鮎太、妹さくら、同級生の河本温人はふとしたことから江戸時代初期にタイムスリップする。
     そこで出会った僧侶、日船や石仏泥棒の富蔵、角石村の剣の達人、竹内老翁、建部藩主、池田宗春らの力を借りながら、 彼らはしだいに自分たちの力で生きていくことに目覚めていく。
     そんな中、鮎太は「姫こ渕」で美しい姫と出会い、必ず現代にいっしょに戻ると誓う。
     さまざまな出来事を乗り越えた鮎太らは、メールの指示を受け、再びタイムトンネルに乗る。
     そして着いた所は再び江戸時代?そこで瀕死の男を見つけた3人は、近くの小屋に住む若者に助けを求める。


    *主な登場人物*
    建部 鮎太(あゆた)
    建部に住む、中学一年生の少年
    建部 さくら
    鮎太の妹、小学五年生
    河本 温人(あつと)
    鮎太の同級生
    建部 鮎一郎
    鮎太の父 岡山の大学の教授
    建部 すみれ
    鮎太の母 
    建部 鮎男 
    鮎太の祖父だが亡くなっている
    建部 桃江
    鮎一郎の母、鮎太の祖母
    楓(かえで)
    鶴田城の姫君
    黒船 
    イカサマの賭博打ち
    鮎一 
    八幡の渡しの舟頭
    桐乃 
    塩問屋の一人娘
    吉岡有隣
    福渡の名医。
    吉岡弘毅 
    有隣の三男。日本基督教の先駆者。 

  •        

―― 2――

さくらが押さえた腹部のさらしがぐっしょりと赤く染まった。
 ケガ人は気を失ったまま、「ううー」と唸り声をあげる。
 「兄ちゃん、温人ちゃん、この人の体を押さえていて、さらしを代えるから。気がついて痛くて暴れるかもしれないから」
 ケガ人の男は四十歳くらい、頬からあごにかけ、ごわごわのヒゲが生えている。いかにも人に嫌われそうな顔だ。
 もうこの時点で僕らにはここが二一世紀ではないのがはっきりしていたし、この男が江戸時代末に悪行を働いて殺された「黒船」であるとも想像がついた。
 温人がやっと話す気にでもなったのか、
「タイムリターン、失敗だったね。2百年は近づいたけど」ぼそっと言った。
 さくらが「でも、私たちのことを連れ戻そうとした人が、またメールをくれるかも」
 その時、戸口から年配の男の人が駆け込むように入ってきて、さくらの手にしたさらしを引っ張り取ると、 そのまましゃがみ込んで腹の傷を覗いた。  小屋の人も戻ってきて、もう一人、若い人を連れていた。 その人が「父上、助かりますか」と先に来た人に声をかけた。 「うん、もう少しで手遅れになるところじゃった。この者らの手当てがなければ、この悪党もあの世に行っとったじゃろう、運のいい奴じゃ。まあ、その分、まだちょっと、痛い思いをせにゃあならんけどな。コウキ、縫合具をよこせ」
 コウキと呼ばれた色白のひょろ長い青年は抱えていた風呂敷包を開け、中から裁縫箱のようなものを取り出して父に渡した。
 「よし、じゃあ縫うぞ、コウキとアユイチは両肩を押さえてろ」
 とっさに僕が呼ばれたのかと頭の方へ回ろうとしたら、小屋の青年が「いや、わしだ」と言って制止した。
 「子どもらは足をつかんどれ。娘、おめえは、そこの棒を持ってきて、こいつが目を覚ましたら、おもいきり頭に1発くれてやれ」
 言われるままに僕と温人はケガ人の足を押さえに、さくらは丸太を手にして頭の前に立った。  傷口を布で簡単に拭き終えると、太い木綿針を出してろうそくの火であぶり「よし!」と言った。
 次には「あっあっー」とケガ人が飛び起きようとするのを、さくらが「ゴツーン」と手加減せず叩いた。男はそのまま、くにゃっと元のように眠った。
 それからは早かった、三十秒もかからなかった。名医だと思った。

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はたして、これから再び何が起きるのか?


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  *この物語に登場する人物や出来事は、あくまで想像上のもので実際の人物、史実とは異なります。




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