*これまでのあらすじ*
建部中学1年生の建部鮎太、妹さくら、同級生の河本温人はふとしたことから江戸時代初期にタイムスリップする。
そこで出会った僧侶、日船や石仏泥棒の富蔵、角石村の剣の達人、竹内老翁、建部藩主、池田宗春らの力を借りながら、
彼らはしだいに自分たちの力で生きていくことに目覚めていく。
そんな中、鮎太は「姫こ渕」で美しい姫と出会い、必ず現代にいっしょに戻ると誓う。
さまざまな出来事を乗り越えた鮎太らは、メールの指示を受け、再びタイムトンネルに乗る。
*主な登場人物*
建部 鮎太(あゆた)
建部に住む、中学一年生の少年
建部 さくら
鮎太の妹、小学五年生
河本 温人(あつと)
鮎太の同級生
建部 鮎一郎
鮎太の父 岡山の大学の教授
建部 すみれ
鮎太の母
建部 鮎男
鮎太の祖父だが亡くなっている
建部 桃江
鮎一郎の母、鮎太の祖母
楓(かえで)
鶴田城の姫君
黒船
イカサマの賭博打ち
鮎一
八幡の渡しの舟頭
桐乃
塩問屋の一人娘
吉岡有隣
福渡の名医。
吉岡弘毅
有隣の三男。日本基督教の先駆者。
「へへへ、ちょれえもんで、あんな偽もんのサイコロのだまされるなんて。これじゃから、イカサマ賭博はやめられんのじゃ・・・さあて、摩利支天さんにお礼参りをしておくか・・・、ひぇ、なんでぇ、大勢でやって来やがって。あっ、痛え、痛え、うっ、やめてくれ、ゆるしてくれー、もうせんけん、勘弁してくれー。おお・・・だれか助けてく・・・」
「お兄ちゃん、今、何か聞こえなかった?」
「うん、べつに何も・・・」僕らは、もう三十分も川岸を懐中電灯を頼りに歩いている。
題目岩のトンネルに再び訪れた強烈な光。その後、気づくと前のように川原にいた。でも、あたりは真っ暗で、電灯も点ってないし、車の走る道路も見当たらない。すでに、ここが僕らの戻りたかった時代にたどり着いたのではないことがわかっている。ずっと向こうに、町並みの明りが見えるので、そこまで行けば何かわかると思う。
「ううう、だれか、た、たすけてくれ・・・」
「鮎太、今、人の声がしたよ」温人がさっと、さくらに寄り添った。
「お兄ちゃん、怖い、誰かいる」
「た、た、たのむ、手をかしてくれ・・・」
僕はすばやく懐中電灯の青い光を地面に向け左右に振った。草むらに人の着物のようなものが見える。
「だれ、誰ですか?」近づくと、髪がザンバラにほどけた男の人が腹を抱えて、もがいている。
さらに、近寄ってみると着物が真紅に染まっている。僕と温人はすぐにしゃがみ込み、その傷口を確かめた。
男の人は気を失ってしまっていた。さくらから血止めの薬とさらしを受け取り、温人に体を持たせてグルグル巻きにした。このままでは死んでしまう、でも動かしようがない。
僕らは、近ばに人家がないか探した。すると前方に、かすかなオレンジ色の火が見えた。僕は二人を残し、その方へと進んでいった。
小屋の中でマキが焚かれている。
「すみませーん」と声を掛けながら近づいた。
黒い人影がして「はい、どなたでしょう?」と答えた。
僕は「すみません、旅の者です。今そこで人がケガをして倒れているんです。力を貸してもらえませんか」とお願いした。
その男の人はすぐに松明(たいまつ)を手に「どこだ」と聞き、僕の行く先へとついて来た。この時までには、ここが以前と変わらぬ江戸の時代だとわかっていた。着物にちょんまげだった。
温人とさくらのいる場所まで戻ると、男の人はケガ人の顔を照らし「あっ、こいつバクチ打ちの黒船じゃあないか。おおかた、仲間の仕返しにでもあったのだろう」
そうして腹の傷口をさらに照らして眺めると「こりゃあ、戸板で運ぶしかねえな、ちょっと、待っててくれ」と、
そのまま引き返して、やがて畳半分くらいの長細い板切れを抱えて来た。
ケガ人を四人で持ち上げ戸板にのせると、さくらが松明を持ち、前を男の人が後ろを僕と温人が持つかたちで小屋の方へ向かった。もしこの男が石引に墓のある黒船だとすれば、今は一八〇〇年代?
小屋の隅に設えた2畳ほどの床にケガ人を寝かせると、男の人は「ちょっと、みててくれ」と言い残し、また出て行った。灯りの中で少しの間、顔を伺っただけなのに、その人の良さがわかった。それに以前どこかで会ったような気もする。
「あの人は誰かに似てる・・・」
はたして、鮎太たちは無事、現代にたどり着くか?
「アメージングストーリーマップ&中田新町絵図」←PDFで
*この物語に登場する人物や出来事は、あくまで想像上のもので実際の人物、史実とは異なります。