Asagaya Parkside Gallerie
喫茶室
（ 初タイ犬 ）
タイの国に初めて行ったときこの犬に出くわした。
その日深夜にドンムアン空港に到着した。
外に出ると土埃に排気ガス、食べ物を焼く煙、
果物の甘ったるい香り、人の汗の匂い、そんな
こんなが熱気に乗ってムァーと押し寄せてきた。
人の視線が射るように刺さった。
ああ、これが異国なんだとつくづく感じた。
空港のベンチで一夜を明かし、不安な心持ちで
バンコックのフォアランポーン駅に降り立った。
早朝の街中は人通りも少なく、昨夜見た喧騒が
嘘のようにひっそりと静まりかえっていた。
路地に入った所で屋台を見つけた。おじいさんが
お粥と豆乳を出していた。粥には刻み生姜と葱が
絶妙に散らされている。まさにほっとする味。
甘い豆腐（タウフー）にも顔がほころんだ。
やがて近所の人が、次々パジャマ姿で食べに来た。
ビニール袋で買っていく子供もいる。
道のあちこちでは犬が朝寝をしている。足元でも。
「なあんだ、この国、結構わたし好きみたい」
思わずそうつぶやいていた、私の
”初タイ犬（初体験）”。
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