初めて自転車に乗れた時、今でもよ〜う覚えとる。
夕方、いつものように父親が会社から帰って来て、「ほんなら、今から練習しよう」と言って、後ろの荷台を押さえてくれて、
いっしょに前へ進んで行った。
スースー、スー、スピードが出て、「持っててよ、手を離さないで」「だいじょうぶ、ちゃんと押さえてるよ」って言いながら。
だいぶ走ったら、急に後ろに父親がいない気がした。
その途端にフラっとこけた。
泣いて怒ったら、父親が「せえでも、あそこま自分で行けたじゃろう」と笑った。
それで一人で乗れるとわかって日が暮れるまで練習した。もう一度も転ばなかったよ。