この月になったらもう建部中が笛と太鼓の音でいっぱいになるんじゃ。
近くの公民館に毎晩、集まって練習するんじゃけど、
よその神社に負けてはおえんで言われてきびしいんじゃ。
せえでも、獅子をかぶれる子は数人じゃけん、やりたくてもやれない子もいて、悔しい思いをしてな。
祭りの前の日は宵宮(よいみや)言うて、この日が一番の盛り上りじゃ。
朝早うから、一軒一軒、家を回って、おひねりをもらって、そりゃあ子どもにはうれしかった。
大人になって都会に出て行った人らも、この時ばかりはじっとしておれん言うて帰って来ておった。
今はだんだんにこの町の人の数も少のうなって、神楽を舞う人もおらんようになってさみしいことじゃ。