■「新たけべの彩時季」
すでに報道でご存じの通り、3月に起きた岡山市南区の山火事は鎮火まで20日間を要し、多くの人が経験のない避難生活を送られた。
そして今年も間もなく雨季に入りその後の台風シーズンへと突入する、いつどのようなかたちで着の身着のままの避難となるやもしれない。そんな折、今年で3年目となる建部中学校が取り組む中学1年生を対象とした「防災研修」が注目される。
5月13日(火)から2日間に渡ってのこの研修内容は1日目が「避難所づくり」「避難所運営」「防災食づくり」。
2日目が「救急救命訓練」「防災ウォークラリー」「成果発表」となっている。
その1日目「避難所運営」を取材した。
今回も地域の人が参加する避難所運営だが、昨年と異なるのは、あらかじめ生徒たちが設営した避難所を参加者が点検し意見を述べる点。(昨年までは、
参加者が避難者の役になり意見を言う)
午後1時半、体育館1階、武道館には地域の人たち20名ほどが集合。まずは、この4月から新しく赴任された大山校長先生からのお話。
「この研修では子どもたちが自分の考えの基で避難所運営をしていきますので、地域の方から見たご意見や良きアドバイスを頂けたらと思いますのでよろしくお願いします」
そして、これまでの防災研修を指導してきた片山先生からのオリエンテーション。
「今日は地域の皆さんにクジで4チームに分かれていただき、生徒たちが4グループになって作りました避難所を観ていただきます。そして、それぞれが作った避難スペースの理由を聞いていただき、それを受けて気づいた良い点、もう少しこうした方がいいといった改善点を生徒たちに伝えていただけたらと思います」
時間は1時間、受付で付箋(ふせん)が渡され、良いと思った点を黄色い紙に、改善点を赤い紙に書き込んでフィードバックし、地域の大人と一緒に作り上げていくのがねらい。
さっそく2階、体育館へ移動、受付へと進む。
受付では1年生20名が待機、参加者に避難食(水・アルファカ米)と付箋の付いたバインダーを手渡した後、4チームに分かれた大人たちを順次、決められた避難所へと誘導する。
「1グループ」は3つのテント、「高齢者用」「犬猫ペット用」「トイレテント」で構成。
工夫した点:「高齢者用」テントにダンボールで作ったツエを置いた。(これは、ありがたい)
「犬猫ペット用」テントにはダンボールのエサ箱を置き、「トイレ」テントには同じくダンボール製消臭スプレーを用意。
続いて「2グループ」こちらも3つのテント、「家族スペース」が2つと「トイレ用」
工夫した点:1つのテントにベッドを2つ入れ、つなげて広く使えるようにした。
イス、枕に利用できるダンボールの箱を用意した。
トイレにプライバシーを守れるようにダンボールでドアを作りドアノブも付けた。(おお、すばらしいの声)
「3グループ」は、テントなしオープンスペースにベッドが2つ。1つはダンボールで囲まれている。
まずテントを使わなかった理由:これは体育館に作るのではなく、教室を避難場所にして使えるように考えた。
ダンボールで間仕切りをしたのはペットを連れてきても良いようにゲージを作った。(なーるほど、そういうことか)
「4グループ」はテント2つ、「病人用」「家族用」共にベッドとダンボールで作った机、イス、ドア付きトイレ。
工夫した点:イスとテーブルを置きくつろげるようにした。
トイレも一緒なのでその中で安心して用が足せる。(まるで、ビジネスホテル並み!)
生徒たちの説明に大人たちから次々、感心したことや疑問点が投げかけられる。
「トイレスペースが広すぎるんじゃない、広いとかえって不安になるのでは?」
「消臭スプレーはたしかに必要だと思う」
「ドアにノブを付けたのはビックリした、よく考えられている」
「このスペースだともう一つベッドが入るのでは、より多くの人が避難することを想定した方が良いのでは?」
「イスが必要かな、それより物が置けるテーブルが必要では?」
「たしかに体育館だけでは対応できないので教室をペット同伴用に考えたのはいい考えだと思う」
「トイレは必要だがその処理についても考えてほしい」
「着替えとトイレをいっしょにしたらどうだろう?」などなど。
こうして説明を受けた大人チームはまだ聞いていない次の避難所へと移動。
あっという間に60分経過、大人たちのバインダーにはびっしりと赤黄のコメント。
「まとめ」はこれまでにも研修をアドバイスして来られた森田講師より。
「今日は短い1時間でしたが、1年生の生徒たちが真剣に考えてくれていることが伝わったのではないかと思います。実際、先月も山火事で港南では避難する人が出ました、いつ何時あるやもしれません、残念ですが今年もあると思うので意識を持って、その時には
今日の子どもたちと地域の人が協力してやっていってください」
閉会は始まり同様、生徒全員が受付に並び「ありがとうございました!」と感謝を伝えお見送り。
大人たちも顔をほころばせながら「ありがとうね、よくがんばったね」と口々にねぎらいの言葉をかけ解散となった。
記者感想:今回も内容の濃い防災授業だった。この4月に入学したばかりの新入生がここまでやれるとは、責任を持たされて自分たちの力で工夫を重ねて取り組んだ
ことが手に取るように分かった。地域の人たちも子どもたちの成長に大きな期待と安堵を持ったに違いない。
本研修を準備された先生、講師の方、お疲れさまでした。
(レポート・写真 三宅 優)