■「新たけべの彩時季」
すごい朗報だった、里山建部が「春の祭り」を復活すると聞いて、
「えっ?どこに、そんなエネルギーを蓄えてたんだ?」
この5年、何もかもが止まってしまい、活力を失い、何よりも人のやる気を喪失させてしまった。
そんなコロナの大波に流された今日、「またやるぞー!」の叫び、それもほとんどのメンバーが後期高齢者。
この企画をした「森の育ての親建部・連絡協議会」会長で当新聞編集長である勝部 公平にその理由を聞く。
「やはりねえ、この5年というのは世の中を大きく変えた、特に地方と地域の元気がなくなった、持続可能を問う時代に気力が失せたら何も続かない。
だからね、老若一丸となって取り組もうとするその姿勢を見せることが今、大事だと思ったんだ」
活動をずっと共にしてきたスタッフの一人も、
「今まで誰かが狼煙(のろし)を上げてくれりゃあと思ってた、それが叶って今日は楽しみなんじゃー」と感想を述べる。
里山の朝は木立に差し込むやさしい光と鳥の鳴き声で静かに明ける、その里山に人の活気が伝わり始める。
開始1時間前、勝部の言う老若スタッフ40名が富沢、鳥越池周りに集合、祭りの準備に余念がない。
会場は2つに分かれる、メイン会場は展望台を望む東屋(あずまや)周辺の「お祭り広場」、第2会場は池に沿って下った「森の風広場」、
共に体験コーナーや飲食、休憩施設が用意されている。この自然と十分に触れ合えるよう入念に計画されている。
午前10時、勝部実行委員長による開会の宣言。 そしてお待ちかね「はっぽね太鼓」の威勢の良い演奏。 「ドドンド ドン 」山に響き渡る太鼓の音は建部平野へと広がっていく。
この日の出し物を見てみよう。
「お祭り広場」には、地元女性陣による「イノシシうどん」(なんと200円!)、鶴田地区からはアクティブ鶴田連合会による「ジビエコロッケ」、お隣には「建部ヨーグルト」、体験コーナーは「めだかの学校」主催による「巣箱づくり」、
自分で焼く「竹パン作り」、山すそではシイタケの「菌打ち体験」、「マキ割り機体験」。
「森の風広場」に歩を進めると、女性グループによる焼き立て「森のピザ」、手作りスイーツ「チュプ」、淹れたて「サニーデイコーヒー」。 そして今回注目のアトラクション、ポニーの登場、「ポニーに乗って里山散策」体験費無料!。
すっきり晴れ上がった空、気温は23度、観客たちは好き好きに自分時間を満喫する。
本部前では岡山県演奏家協会による「クラッシック演奏会のコーラス共演者募集」の呼び掛けが始まった。
建部在住の佐藤麻衣子さんら演奏家の直々の声かけに興味を惹かれた人もいたのでは。
先ほどから司会を受け持つのは若手ナンバーワンの花房君、軽妙な話術が得意。プードル連れてお祝いに来てくれたのは県議会議員、大塚愛さん、市議会副議長、森田卓司さんも駆けつけてくれて、このイベントへの期待度が伺える。。
正午にもなるとセーターを脱ぐほどに暖かくなる、建部ヨーグルト前にはソフトクリームを求める人が列を作り、マイクからは40分待ちの予約者へ「〇〇さま、ピザが焼けました」とアナウンス(笑)
池の周りでは家族連れがのんびりと昼食を取る姿、人と自然が素直に溶け込む風景に、あらためてこの活動の大切さを認識させられる。
午後1時、お祭り広場では餅投げに集まった大勢の人、秒読み開始、「2・1・ゼロ!」で山の中腹から紅白の餅がいっせいに撒かれる。
この5年の鬱屈(うっくつ)を思い切り解き放すかのように。
午後2時、多数の老若男女が豊かな時間を共にした「春の里山祭り」は「来年も会おうね!」を合言葉に幕を閉じた。
展望台ではまだまだ遊び足りない子どもらの姿が・・・(笑)。
(レポート・写真 三宅 優)
岡山市環境学習センター「めだかの学校」、昨今、ここの催す講座がすこぶる人気。7・8月に実施するサマースクールはもちろん、他に「タケノコ掘り」や「魚とり」など
、募集開始から申し込み電話が鳴りっぱなし。
前週(2月23日)行われた「親子環境フォーラム」もキャンセル待ちが多数。スタッフとしてはうれしい限り、これもひとえに館の運営を担ってきた武藤館長(今年で退任、お疲れさまでした!)と職員、ボランティア仲間のおかげ。
では先日、建部町田地子地区で行われた「令和6年度 親子環境学習フォーラム」のレポートをお届け。
2月最終の日曜日、朝8時半、すでに「めだかの学校」本館には親子連れの姿が何組も。
(記者)「何時に出てこられましたか?」
(保護者)「ええっと、7時過ぎには出ました」
と言うことは「6時起き?」「そうです、遅れないようにと」
う~ん、意気込みが違う(笑)
8時45分、受付を終えた親子9組28名は、それぞれの車で山間の道を10分のドライブを経て現地に到着。
会場となる多自枯鴨神社では現地スタッフが焚火をしてお待ちかね。
田地子区長で実行委員長の本田さんによる開会のあいさつ。
「みなさん、ここは自然に囲まれたとっても歴史の古い山村です、今日一日、いい思い出を作ってお帰り下さい」
さあ、スタッフ合わせて50名の交流体験が始まった。
まずは「花炭」の仕込み。「花炭」は松ぼっくりやドングリ、楓の実、藤の実など森の物を
スクモを入れた空き缶に入れ、密封して火の上で焼いて炭にするもの、消臭剤や玄関の飾りに使えて重宝する。
「A」から「I」まで記号の入った缶を各自が持ち、好みの素材を選んで入れる。
「スクモは敷く程度にしていっぱい入れたり、あまり大きいと焼き残るからねー」指導の勝部(当新聞編集長)が数十年の経験からアドバイス。
続いては「焼き芋」の仕込み。小山に盛られたスクモの上に立つエントツからはモウモウの煙。
子どもらはスタッフから渡されたサツマイモを手に水で濡らした新聞紙で包み、さらにアルミフォイルで2重にし、それをスクモの中に埋める。
「全部、作って入れてください、自分で作ったのが食べれるとはかぎりませんからねー」(スタッフ)
準備完了、あとは「火の力」と時間におまかせ。
自然工作タイム。「今日はね、竹鉄砲とヤジロベーを作るよー」
これも、子どもの頃から数えると60年以上の経験を持つ記者が説明。(そう言えば、この鉄砲で友だちと散々に撃ち合って遊んだものだ)
材料となる篠竹やドングリはこの近辺であらかじめ採取してある。
「竹鉄砲はね、この竹のこの部分を切り取って・・・」(あとの説明は長くなるので省略)
「じゃあ、撃ってみるよ」
固唾を飲んで見つめる参加者、そこへ「スパッン!」の空を切る快音、「おおー!」のどよめき(笑)
ヤジロベーの説明も終え、後は「僕、竹鉄砲やりたい」「私、ヤジロベー」と、てんでに開始。
始めは中々、完成に至らない。保護者の方も
「この持ち手がユルユルなんですが」
「ササの葉っぱとか詰めて固定すれば大丈夫」
「これ、どうして飛ばないのでしょう?」
「ああ、それは玉(濡れ新聞紙)のつめ方がゆるいから」
それでも10分もすると「ポーン!」と鳴り出し、子どもらも
「ねえ、見てて、見てて、やるよー」と活気づく。
ヤジロベーもこの道70年?の古本さん他、ベテランが指導。手早くドリルで木に穴を開け土台を作る。
ただ、竹ヒゴを火であぶり曲げたあとドングリを中心と左右に付けてバランスを取るのが意外と大人でもムツカシイ。
「これって、すぐに、落っこちてしまうんですけど」
ドングリの位置をずらし、左右が平衡を保つ点を見つけてあげる。
「あっ、やったー、できました」
単純だけどムツカシイ、でも出来るとすごく不思議でオモシロイ。
子どもだけでなく、大人も夢中になって遊んでいる間に、
「お~い、焼き芋ができたぞー」の声。
掘り出された銀色の包み、そこから出てきたのは黄金色に輝くサツマイモ。
ホッカホカを頬張ると「うう、うまーい」
手が止まらなくなって、もう1本、もう1本、
「このあと、お餅も焼くからねー」のスタッフの声もどこへやら(笑)
「花炭」の缶を下した後の炭の上で焼くお餅も味わって、親子は再び工作へ。
「スパーン!」「ポーン」と境内の空にいくつもの小気味よい音が響き渡る。
「これ、面白い、ハマっちゃったー!」
意外や、夢中でやってるのはお母さん(笑)
昼食はおにぎりと地元の方が作ってくれた具沢山の豚汁と漬物。
「おいしいね」「うん、ボク、お代わりしていい?」
自然に囲まれ、家族でいただくお昼ご飯、これぞ至福の時。
お腹もいっぱいになったので、午後から里山散策。
空からは小雪が舞い始め、「そら、歩け、歩け」と掛け声掛けて、本田区長さんのガイドを聞きながら40数軒ある田地子集落の田舎暮らしを見て学ぶ。
帰ってからは、引き続き本田さんから地域の昔の生活の仕方についてお話を聞く。
「昔は電気がないから、こうして炭を鉄鍋に入れてアイロンにしたり、コタツにして暖を取っていたんだよ」
このあと、地区で引き継がれてきたお祭りの神楽「棒遣い」の演舞を地元小学生が披露してくれた。
共に県外から移住して来た子と紹介を受け、参加者もビックリ(笑)
そろそろ閉幕の時、先ほどの雪も止み、「花炭」を開封。
「おお、きれい!」「あっ、ちゃんと、出来てる!」「これ見て、かわいい!」
それぞれに満足した様、閉会のあいさつは記者(三宅)より。
「みなさん、今日は楽しく過ごせましたか、たけべは自然がいっぱい、いろんな発見ができますよ、また来てくださいね」
と言うことで、また来年にお会いしましょう(笑)
(レポート・写真 三宅 優)