■「新たけべの彩時季」
2024年10月13日(日)昼、号砲、「それっ、建部祭りだ!」
岡山県指定重要無形民俗文化財、備前建部郷秋季大祭「建部祭り」は、いつ始まったのか。市の観光ページを見ると起源は不詳、近世(江戸時代1700年代)には参集の記録ありと書かれてある。
いつからやってきたのかわからないが、とにかく数百年は続けてきた、とんでもない頑張りだ。
その頑張りが、あの「コロナ」で途切れたことは致し方ない、ほとぼり冷めれば見事に復活、昨年の隆盛はいまだに頭に残る。(昨年の模様動画93秒)
そして今年もすごい力の入れようらしい、岡山駅コンコースの大型テレビでは連日「建部祭り」を放映とか。
それでは、建部っ子が三度の飯を忘れても、これだけは忘れない、
「建部祭り」の始まりだー!
2024年建部祭りの模様 (ユーチューブ動画 99秒・江田侑生 撮影 )
この日の天気と言えばまさに”お祭り日和”。岡山市北区建部町建部上にある「七社八幡宮」前には続々輿守や神楽の演舞者が集結。
鳥居前には「宮地神社」(宮地)「天神宮」(中田)「佐久良神社」(桜)「七社八幡宮」(建部上)「多自枯鴨神社」(田地子)「真名井神社」(市場)「富沢神社」(富沢)「天満天神宮」(久具)、八つの郷からなる神輿(みこし)が並ぶ。
白装束の輿守たちの飛び切り明るい声が飛び交う。
「おお、ノブちゃん、久しぶりじゃのうー」
「おう、イッちゃん、元気じゃったか―」
鳥居内に並ぶ色とりどりのテントからは、「串焼き」「タイ焼き」「タコ天」「黄金唐揚げ」の匂いがプンプンと立ち上がり、
お祭り気分はさらに盛り上がる。
開始まで30分、すでに上の境内には、始まりを待ちわびる沢山の人。
12時50分、お囃子が鳴り神楽が動き始める、同時に棒遣いも演舞に入る。演奏、演舞を受け持つのは大人とそして大勢の子ども。
夜を徹して行ってきた練習の成果が今日、現れる。
「今年はなあ、コロナもなくなって、しっかりと練習ができたんだって」
見守る親たちの自慢げな顔。
そして号砲、いよいよ宮入(みやいり)の始まり。
先頭は建部上「七社八幡宮」、行列に続き獅子が往き、笛と鐘、太鼓が進む。
やっとのことで随身門をくぐり抜けた神輿(みこし)、この御神幸、最大の難関だ。
次々と各社の列も後に続く。
数千の観客が待ち構える馬場に到着した神輿は、そのまま場内を練りまわり、一気に御仮屋へと駆け上がる。
が、まだ勢いが足らんと押し返される神輿、「よっしゃ、じゃあ本気で行くでー」と更に全力疾走。
そのうち「暴れ神輿」の異名をとるのでは?とばかりの神輿がやって来る、馬場の四方八方を駆け巡り、坂を上ること8回、
「もういい、もう十分!」と総代が宥めるも「まだまだー」と駆け回る、これには観客も大喜び。
こうして無事に御仮屋に納められた八社の神輿、神官たちによる「祝辞奏上」を終え、祭りの華である神楽奉納へと進む。
最初の奉納は中田「天神宮」の神楽。4体の獅子がいっせいに右に左にと首を振り、両手を広げ足を揚げ舞い踊る。
一糸乱れぬ動きに観客の目が釘付けになる。
背後にズラリと並んだ子どもたちのお囃子隊、こちらも揃いに揃った音色を響かせる。
2体の獅子は踊りながらさらに御仮屋へと上がる。
馬場では他の奉納神社による獅子舞が始まった。太鼓や笛の音が何倍にも大きくなる。
いつの間にか、溢れんばかりに増えた観客、外人さんの顔もチラホラと。
「もう、お盆にも正月にも帰らないのに、祭りだと言うと帰ってくるのよ、うちの息子・・・」
こう話す、お母さんの顔は嬉しさを隠せないでいる。
そうして、あらためて会場の人を観ると全員が晴れやかな顔で微笑んでいるではないか、一年に一度の祭りを心から楽しんでいる。
「多自枯鴨神社」の棒遣い奉納が始まった、小さな女の子も交えての演舞だ。
「カーン」小気味のいい音が大木を抜けて空へと響く。難しい振付を大人に教わりながら練習をしてきたと言う、そのことが観る者にも伝わってくる。
取り囲んだ観衆全員で惜しみなく拍手をして応える。
まだまだ演舞は続く。「3段神楽(継ぎ獅子)」舞手が肩車をして高い位置で舞う。これも4つの奉納神社による演舞。
大型の望遠カメラを首に下げた写真愛好家と思しき人ら、「いやあ、見ごたえがありますねえー」
「大したもんじゃー、毎年これをやるんじゃから」
聞こえた記者も「そうでしょう」と、つい口に出そうになる(笑)
いよいよ(何度も使うけど、いよいよホントに)フィナーレの「高々」。御仮屋に勢ぞろいした輿守たち、これから一挙に神輿を下へと運ぶ。
「ワッショイ!ワッショイ」の掛け声で神輿を担ぐとダダダダーと真砂土を滑り降りる。
一列になった8つの神輿、それが次に「ウォー」の叫びと共に神輿を両腕高く持ち上げる。どこよりも高くと、つま先立つ輿守たち。
こうして令和6年「建部祭り」はケガ人も出ず(多分)、最高の盛り上がりを見せて閉幕となった。
「また来年なー」とマイクで呼びかける井口代表の声もチョッピリ寂しそう。
七社の神輿が帰路に着いた後、境内では最後の神楽の奉納が催されていた。
「今日、まだ踊ってない子は、今、踊れよ、もう来年まで無いぞー」
指導に当たる大人の呼びかけに、子どもが応じる。
「そう、悔いのないように、今を踊れ!」
(レポート・写真 三宅 優 撮影協力・江田 侑生)