■「新たけべの彩時季」
かつて、この町を「釣りと桜と温泉の町」にすると宣言した時代があった。夢ははかなくも消え、今は「荒れた山畑と年寄りと猪」の町。
そんな建部町で30年振りと言われるアユ釣り大会が開かれた。会場となったのは「カヌー大会」が開かれる「しあわせ橋」の上と下の流域。
「令和5年岡山県鮎釣り選手権」と銘打ったこの大会には吉井川・旭川・高梁川の水系ごとに15名3チームが出場し、腕を競った。
開会に当たっては、建部町のエース森田卓司・岡山市議会議員も駆け付け選手激励をした。係りの人によると、川石のコケの噛み後がそれほど多くないので大漁は難しいかもしれないとのこと。さてさて、アユたちはどこへひそんでいるのだろう。
午前9時、おとりアユを受け取った選手らは、決められた流域へと入って行った。
この後、残念ながら競技の結果は記者の怠慢で聞けていない。と言うのも、記者はあまり釣りは得意ではない、もっぱら塩焼きのみである(笑)。
ただ、奇しくも30年前に描いた光景が今日(こんにち)観られることに不思議な感慨を覚えた。
釣り人、鉄橋を渡る列車、八幡温泉、桜並木・・・演出道具は今もそろっている。
(レポート・写真 三宅 優 写真提供・森田卓司 岡山市議 )
午前9時、すでにスマホの温度計は31度、「こりゃあ、大変な暑さ(熱さ)になりそうだな」
そう話すのは地域のコミュニティハウスで「たこ焼き」の仕込みをする男3人、
実はこの3人、歴代の町内会長で未だに第一線で汗を流す(笑)
この日(7月16日)、1年ぶりのJR福渡駅でのイベント「福ふく市」が開かれる。福渡町の「たこ焼き・福丸」は今や「売り切れごめん」の人気、期待を裏切るわけにはいかない。
10時開始を前に福渡駅には何人ものボランティアスタッフ(なんと全員、自主参加!)と出店者「石窯パン屋nico」「スイーツ チュプ」「サニーデイコーヒー」
「建部物産販売所」そして我が「たこ焼き福丸」、それとイベント出場の「はっぽね太鼓」の面々が次々、到着。
「おお、結構、気合入ってるな」長く取材をしてきた記者感が「ピピッ」と反応。
一方、こちら「たこ焼き」グループ。女性陣3人と次期町内会長(井手)の応援を得て試作に入る。
「石窯パン屋 niko」さんのピザ窯にも火が入る。互いに目前温度40度越え必死。並べるだけの「物産」「ちゅぷ」さんがうらやましいー。
そんな「物産」ブースで「おっ?」と見ると「建部産」の桃、「さすが、旬を持ってきたな」
とは言え、列車停止時間はわずか8分、それに向けて迎える側が全精力を傾けるのだから「のんびり朝市」とは少々、様子が違う。
これはもう「スゴイ!」と言うか、「何だ、このエネルギー、どこから湧いて来るんだー」と我ながら聞きたくなる(笑)
「今日は何食の予定ですか?」オニビジョンの記者さんの質問に「う~む、80食位かなあ」
一度、火を入れたらそこを離れられない、取材は成就寺の森本美登里さんにお願いする。
開店してすぐに、ひっきりなしにお客さん、急遽、「これじゃあ、すぐになくなるから、お一人2パックまでにしよう」と作戦変更。
アイスコーヒーの「サニーデイ」さんにも列、屋根のないロータリーはまさに炎天下。どこから来られたのだろう?見慣れない子ども連れがゾロゾロ。
常連のアニマルおじさんもモルモットを連れて遊びに来てくれた。
11時半、駅舎内は手に手に小旗を持つ子どもや大人で、大混雑(あくまでも記者の耳からの取材)
そうして「ドド~ン!」「そ~れ!」駅前ロータリーに陣取った「建部はっぽね太鼓」が鳴り響く。
スタッフの一人、東さんのハンドマイクの呼びかけ。
「みなさん、間もなく列車が到着します、小旗を振って歓迎しましょう。お見送りには子どもたちでシャボン玉を飛ばしましょう」
(なるほど、安上がり、効果抜群のエンターテーメント)
「アッ来た、ピンク列車が来たー」子どもの興奮した声。
列車到着!ホームにびっしり詰めかけたお手振り歓迎に、乗客はさぞやびっくりしただろう、「え?何?」「スゴイ、楽しそう」「降りてみようよ」と言ったかどうかわからないが(笑) 太鼓ステージ前はスマホを手にする人、人、人、おっと勤務中のアテンダントさんも堪らなくなって思わずカメラ(笑)
列車出発の時刻、子どもたちがしゃがみこんでシャボン玉の用意。「♪シャボン玉 飛ばそ、列車の上に・・・♪」
行く人、見送る人、互いが、ありったけの手を振り合う。
わずか8分、されど8分、人々の熱意とまごころがギッシリ詰まった”おもてなし”これこそが我が町、建部の”おもてなし”
(撮影をお願いした森本美登里さんの当日のコメント)
今日は列車のお客さんも多く、歓迎ムードに誘われてほとんどの方が列車から降りてこられました。(両便とも)
そして「建部はっぽね太鼓」の音に惹きつけられるように広場に出られ、見入っておられました。
列車のお客さんは短い時間なので、すぐできるアイスコーヒーがよく売れていたようです。たこ焼きさんは予約でいっぱい。
チュプさんのわらび餅は早くに完売。
nicoパンさんは暑い中でも一つ一つ窯で焼いて下さって、行列ができていました。
お昼ごはんに、ばら寿司を買いに来られたおばあちゃんが、今日はないんですと伝えたら残念そうにしていたのが申し訳なかったです。
イベントが始まる前からお買い物に来られている年配の方や、小さな子ども連れの姿もけっこう見えました。
楽しみにしてくださっている人がいるのを感じました。
三連休中日なので中学生も沢山来てくれ、午前の便を見送る際のシャボン玉飛ばしや、
午後の便の幕持ち、旗振りも手伝ってくれて、とても頼りになりました。
若い子たちが大勢いるとそれだけで活気が出ます。
かなりカンカン照りの一日でしたが、今日の「福ふく市」はひとまず成功です。
(編集部)
森本さん、お疲れさまでした、ありがとうございました。
そして編集部からも一言。
「へこたれない町」というのが全国にあって、
今、確実に建部がその一つになろうとしているのを感じた。
(レポート・三宅 優 写真・森本美登里 )
3年振りの「しろみて祭」。「里山建部」、建部町富沢地区にある夙山をベースキャンプに山の保全と活用を進めるグループ。メンバーは会長、勝部(当新聞編集長)を筆頭に町外からの参加者を含め20名以上が名を連ねる。
この日(7月2日)は、わずかの梅雨の合間とあってスケジュールの都合の付かなかった人も多い、それでも16名が集結、早朝から鳥越池、周辺の草刈に精を出す。
こうした作業は毎月、定例で行われてきた、ただ、このコロナ禍の間は終了後の交流会が開かれることはなかった。今日は「しろみて祭り」、まさに3年振りとなる親睦会。
手入れされた岸辺には、今を盛りと謳歌するアジサイが雨季の味わいを演出する。この季節、草の勢いに恨み言の一つも出てしまうが、それでもこうして自然に囲まれ暮らすことの贅沢さを思わないではいられない。
草刈も一段落した、メンバーはてんでに日陰に集まり、午前中の成果を確認する。
「池周りは、手前がまだ半分残っっとる」
「小屋の裏の斜面はやらなくちゃあだめだろう」
「まあ、これだけ草刈り機を使ったら早いじゃろう」
機械も道具類もすべて「里山建部」でそろえてある、炭を焼いたり、薪を販売したりした資金と市からの助成金で購入した。
一度、手を休めてしまうと、中々エンジンがかからない。前会長の重本さんがそんな様子を察して「今日はもう、これで終わりということにしましょう」と提案する。
そうとなれば、腰を据えて会を楽しむことにしようと、いそいそと車を家に置きに行く人。
知らずか、再び草刈り機の音、どうしてもやり残した部分が気になるらしい。
展望台から下を眺めると、そうした人や車が大きな風景の中でジオラマの模型の様に収まっている。ここには静かな生活がある豊かな暮らしがある、つくづくそう思えた。
「しろみて」の始まり、まずは前々会長の藤原さんによる「しろみてとは?」
(藤原)「”しろみて”はちょうど今頃、田植えが終わりホッとして体を休める習慣から来たもの、稲苗を全部植えて、なくなったという意味だそうです。
その前には田に、”のノ字”の反対に田起しをする”ヤレボー”という行事もあって、皆が牛を飼っていた頃の話ですが・・・」
一つの話で、忘れていた子ども時代へとつながる。
テーブルにはスーパーで買って来た、お弁当、ビール、そして無くてはならない「タコ」。これについては勝部会長の説明。
「なぜタコを食べるかと言うと、苗が土に吸い付くように根を張ることを願って始まったと言われています」(なーるほど)
3年振りの「乾杯!」は数秒の感慨深い沈黙。「長かった、が、とにかく、今日が来てよかった」
一人一人の自己紹介を含めた近況報告に宴が盛り上がる。
ちなみにこの日の参加者名。勝部公平(会長)、重本勝利(前会長)、藤原秀正(初代会長)、片山健次、市川正之、楢村文彦、佐藤誠、平松和弘、前原愼市、杉本久典、本田義章、
佐藤琢志、佐藤卓司
、山路大渡、大塚愛(県議会議員)三宅優(記者)。
今回は新顔の人が2名参加。吉田に来られた佐藤琢志さん、郵便局にお勤めだったそうで、早期退職してからの田舎暮らし。薪ストーブに使うマキを探していたところ、
この活動グループに出会ったとか。
もう一人、山路大渡さんは町外からの参加、1999年生まれと聞いてビックリ。
「きっかけと参加した感想は?」
(山路)「メンバーの図子さんの紹介です、もともと里山に興味があったのですが、まだ慣れていないので仕事はこれから覚えたいと思います。
ここに来ていろんな人が集まって、色々な人生談も聞けるのがうれしいです」(頼りにしてるぜ、若者!)
思い起こせば、道を造り、山を削り、展望台を組み、小屋を建て、すべてメンバーの力で成して来た。それもそのはず、大工の棟梁がいて、ブルドーザーを使う人がいて、
電気に詳しい人、竹細工の名人、山の案内人、あらゆるキャラクターが集まった、人材こそがチームの財産。
そんな会の集まりもそろそろお開き、締めは重本前会長。
「こうして集まってみると、今更ながらに一人一人がスゴイなって思います、それに、みんな仲がいい、
これは誇れます、ここが地域のつながりを産む場になる気がしています。次回は9月です、それまでどうぞ元気でいてください(笑)」
間もなく夏休み、コロナ再盛が聞かれる中、故郷を離れた子どもや孫たちの帰省が懸念される。
そこで、当新聞からもメッセージ。
「お~い、子どもたち、オヤジたちは、こうして仲間と楽しくやってるから、心配せずにそっちでも、がんばってやれ!」
(レポート・三宅 優 )