■「新たけべの彩時季」
遅い刈り入れの稲が黄金に輝く道、先ほどまで肌寒くて着ていたジャンバーも脱ぎ目的地へと向かう。
ほぼ1年ぶりに開かれた、岡山市環境学習センター「めだかの学校」主催の「建部古道を歩く」体験学習。
今日の参加者は市内在住の老若男女、親子連れの家族、計16人。講師として地元ボランティアの江田さん、須見さん、当新聞編集長、勝部が加わる。
古道に足を踏み入れるのは記者にとっても1年ぶりとなる、確かにコロナ禍でイベントが控えられたとは言え、一人で歩くことだってできたのに、どうやら萎えていたのは自分の気力だったようだ。そのせいか、今日の足取りもすこぶる重い。
建部古道の入口は妙浄寺の脇、そこから古墳を観ながら標高212メートルの頂上を目指す。数日前に、道を覆う雑木やササを勝部と「建部歩こう会」会長の本田さんが刈っておいてくれたそうで、二人のパワーに脱帽。
道案内で先頭を行くのは江田さん、もうここに住んで70年以上、その健脚ぶりは7年前に古道を復活した時と変わらない。
「ここに(山道の脇)水が流れているけど、どうしてだかわかるかな?」歩きながらの学びの時間。
「それはね、上に池があって、その水が溢れて落ちてくるんだよ」昔の人の知恵、山は水を貯える役目もあった。
先ほどから子どもたちは、栗を拾ったり、セミの抜け殻を見つけたりで大忙し。この小さな体のどこにそんなエネルギーが入っているのだろう、登るのがやっとの大人(記者だけ?)を尻目に動き回る。
やがて、その「池の山池」に到着。水のあるところ、風がある。夏日を思わす日差しの中の涼風。
「この用水池は、いつの時代の誰が作ったのかもわかっていません」池には菱(ひし)の葉が広がっている、
子どもの頃、その実を湯がいて食べていた記憶が。
「15号古墳」はすぐ傍、奥行き4m70、高さ1.5m、かなり大型。
子どもらも探検開始、でも「なんにもないよー」と言って、すぐに帰還。古代にロマンを感じるのは、
やはり熟年者にお任せしよう。
「やったー!」遂に建部のエベレスト?法寿山、到達!
以前はもっと見晴らしが良かった、コロナに煩わされているうちに雑木成長、すっかり覆われてしまった。
でも、三角地点のある場所は先日きれいに刈ってあって、すぐに見つかる。さっそく登頂の記念撮影。
帰りは池から別ルートで、ひたすら下り道。だが1年のブランクは大きい、一度、休憩した足は中々、動こうとしない。
子どもたちは「次は僕が先頭だよ」と、サッサと前を歩き始める。
後期高齢者は、もつれそうな足をどうにかバランスを取って、1歩ずつ行く。それでも10分も歩むと体に自信が出て、木漏れ日の輝きを味わう余裕も生まれて来る。
こんな時、「ああ今日も素晴らしい一日」と感謝がよぎる。
視界が開け、東の山並みが見えてくる。阿弥陀様の鎮座される展望スポットへと進む。鎌倉期に彫られたとされる高さ2.6m、周囲7.2mの後光を背負った仏さまにお花を供える。
「以前はよく、地元の人らがここまで詣でて、お弁当を食べてました」下に広がる旭川、向こうには福渡の町並み。
川を挟んで備前国と美作国に分かれ、国境の町だったことなどひとしきり学んで、いよいよ終着地、七社八幡宮の境内へ。
歩行距離、およそ4.6キロ、2時間の山歩き。大人たちの感想は「いろいろ勉強になりました」
子どもたちは「栗が拾えたことがうれしかった」「足が鍛えられた」そして「お弁当、早く食べたい」
その点は記者も同じ、歳は取っても腹は減る、「ああ、歩いた後の昼飯がうまい!(笑)」
(取材 勝部公平 三宅 優 写真・三宅 優)
中止となった「建部まつり」このままでは伝統が途絶えてしまう、何とか継承しなくては。
建部に限らず、どこの地区もジレンマ、そんな中、建部町中田、富沢、田地子、3地区で獅子舞、棒遣いによる「村まわり」があると聞いた。
そのうち、富沢の様子を当新聞編集長、勝部が速報!
「写真は成就寺仁王門前です」
福渡でも祭りは中止となった。これから先の存続が気掛かりだが、神事のみは滞りなく続けていかなくてはと、この日、町の氏子とお宮の総代が集まり、例大祭に併せて新調するしめ縄づくりが行われた。
今や、しめ縄を綯う(なう)人がいない状況の中、福渡では数年前より手ほどきのできる人と一緒に見よう見まねで覚え、伝承しようという試みが始まった。
まずは、山と盛られたワラ束を揃え、水に濡らし、槌で柔らかくなるまで叩く。それから、しめ縄の太さを決め、計量しながら3束、1組を用意してから綯う。
綯い方は、左綯(なえ)、これが結構むつかしいのだが、数人で補助しながらやれば、どうにか形になる。
すべて作り終えた時は、足がもつれて立ち上がれないほど、だが達成感は大きい。
お祭りに飾る大切なしめ縄を自分たちの手で心を込めて作り上げる、それも祭りへの参加だと感じた。
(レポート・勝部 公平 三宅 優 )
9月最終日、福渡駅に人が集合、11時38分の電車を待つ。
7月1日から始まった岡山デスティネーションキャンペーン「SAKU美SAKU楽」特別観光列車の運行が、この日一つの区切りとなる。
振り返れば、暑~い、暑~い、夏の陽射しの中、小旗を手に駅に何度も向った、しかし辛い思い出ではなく、満足のある汗をかいた思い出である。
キャンペーンの盛り上げイベントとして開催された福渡駅前での「福ふく市」は1回、2回と回を追うごとに盛況となり、最後は誰も予想しなかった(記者がその筆頭)ほど大勢の人がやって来た。
その日、9月18日は建部中学吹奏楽部の生徒たちが演奏をしてくれた。高らかに鳴り響く楽器の音に、町の人たちや訪れた観光客のワクワクする気持ちが伝わる。
「シング・シング・シング」ジャズの名曲が始まると、子どもも、お年寄りも誰もが身体を揺らして楽しんでいる。
市に並んだ建部の野菜、果実はジャガイモ、玉ねぎ、トマト、きゅうりからナス、南京、ぶどうへと変わっていき、季節の移り変わりを「
たこ焼き」を販売する傍から感じた。
毎回、毎回、おなじみの顔が買い物をして、
列車を迎えて、帰宅する。
11時38分の列車を見送った後、JR岡山駅長さんからキャンペーンを盛り上げた町の人らへ感謝状が渡された。光栄なことである、町の人の”おもてなしの心”が伝わり表彰されたのだから。
そして、町の人からもお返しの言葉。
「この3か月、列車が来ることで一番良かったことは、町の人らがここに集まってくれたこと。みんな、それで楽しんでくれた、
そんなことは今までなかった、ですので、こちらの方こそ、”ありがとう”とお礼申します」
ひとまずピリオドを打ったサクサク列車だが、これからも快速の後尾に連結して走るとのこと。その時は「おお、元気に走っとるのう」と、手を振って歓迎してあげよう。
(レポート・三宅 優 写真提供・森田 卓志 江田 陽子 井手 誠二)