■「新たけべの彩時季」
田地子地区にある多自枯鴨神社は歴史が古い。本殿を囲む木々も当然、長寿を迎えている。
その中の1本は3年前に枯れて切り倒されたが、同じ境内にはまだ数本、寿命を迎えた大木がある。
この日、岡山森林組合の人たちの手で、その大杉が切られることになったので取材した。
境内にはこの日に切られた大樹の根元の年輪が見てとれる。
田地子地区長の本田義章さんのお話によると、これから切る木はさらに大きく、年数にして400年から500年だろうとのこと。てっぺんまでの長さは30mほどで円周は5m。
こんな大木をどうやって下に倒すのか、素人の想像は及ばない。
すでに神社前の道に長く伸びたクレーン車が2機据えられ、空高いゴンドラの中で大杉を前に作業をする人影が見える。駐車場には数十トン級のダンプが控え、下ろされてくる木を待っている。
作業の進行を見ると、はじめに上の枝の伐採から。下からだと細い枝に見えるのだが、降ろされてみると1本の幹と変わらない。これをベルト掛けして、切っては降ろす作業を何度も繰り返す。
そうして、すっきりと一直線になった段階で、ほぼ上から6mの位置に鉄線ベルトが掛けられ、もう一台のクレーン車に乗った作業員の人がこれまた巨大なチェーンソーで近づいていく。
自然の力も凄いが、人の力もスゴイものだと感心。下ろされた幹が道に横倒しになる様はまさに「巨樹、逝く」
何百年も村人を守り、抱き続けてくれた、その偉大さに感謝の念しか浮かばない。
(レポート・写真 三宅 優)
コロナの感染者数がニュースに上らなくなって、世の中、少しずつ前の生活を取り戻し始めたようだ。
小旅行を楽しんだ人からお土産話を聞くことも増え、ここ建部で規模を縮小したかたちで野外行事が開催されるようになった。
「ゴーツー・・・」とはいかなくても、身近で何かをしたり参加することは心の健康上、すこぶるいいことだ。
今日は当新聞編集長(勝部)が10数年、関わり育ててきた「里山建部」での体験授業。
主催者の岡山市環境学習センター「めだかの学校」には7家族23名の申し込みがあった。
午前9時半「めだかの学校」に集合した参加者は、そこから車で町内の富沢地区にある鳥越池を囲む里山キャンプ地へ移動。
現地ではすでに講師の勝部、河原さんがモミガラにエントツを立て火を点けてお待ちかね。家族ごとに用意された机とイスは地元ボランティアの方の手作り。
(ちなみに、この廃材を使ったイス、テーブルは岡山中に1000個以上、無料で届けられている)
さっそく子どもたちは煙の出るエントツに近寄り「あったかいねー」と暖を取る。
開講式、勝部からのあいさつ。
「今、世界ではコップ26が行われ、この地球環境をどう守るかが話し合われています。
それは私たちの社会をどうやって循環型社会へと変えていくかということです。今日作るヤキイモも、
田んぼの稲を脱穀して出たモミガラや落ち葉を燃料にしますが、昔の人はこうやって資源を大切にしながら自然と共存して暮らしていました。
今日はそんなことも学んでください。また、この里山は楽しいだけでなく、こんな(マムシのアルコール漬けを手に)危険な生きものもいることを知っておいてください」
一行はまずは里山の散策から。
「へー、こんなふうに道ができてるんだ、ああいい眺めだねー」と大人たち。
霜で濡れた落ち葉が朝の光にキラキラと輝く、そんな道をザックザック。両側には笹や灌木が覆いクヌギの木がそびえる。
「これってちょっとした探検だよね」「うんうん、子どもの頃したことがある」お母さんたちのメモリアル。
途中、途中で勝部が植物を見つけ説明。「この赤い実は野イチゴ、食べてみて」
「うわー、ホントだ、すっぱ~い」はじめて口にした山のイチゴは酸っぱさも天然。
「左右対称に葉っぱが出ている植物はウルシだったりするので触れないでね。それとこの上を見て、
あれはなんだかわかる?」
見たことのある果実・・・、「キューイだ!」
「そうです、なんでこんな山に成っているかというと、鳥たちがどこかで食べてここで糞をして運ばれたから、
こうして植物も生き延びるため懸命なのです」
ムカゴを見つけ、タラの芽の木を教わり、わずか30分の山中でいくつもの発見。 散策(探検?)の次は「シイタケ狩り」へ!
池の前に並べられたマキの丸太は100本以上、そこからニョッキリ、ムックリ、そしてビックリ級のシイタケ。
参加者はいっせいに「うひょー、デカっー!」「こんなのはじめて」
同行した「めだかの学校」武藤館長も、「私も原木にシイタケがなっているのを見たのは初めてです(笑)」
顔より大きい?のを手にした子どもの「やったー、とったぞー」のポーズがお父さんのカメラに「カシャリッ!」収まる。
まだまだ続く里山体験、焼いもの仕込みを済ませておいて、次は「柿狩り」へ行くぞー!
秋の紅葉を肌に感じながらのショートウォーク、立ち寄ったお寺様(成就寺)の門の左右には恐ーい顔をした仁王様。
「ほら、お前も悪いことすると仁王様に叱られるんだよ」昔と変わらぬお父さんの言葉に何世代と、語り継がれてきた父親像が浮かびホッとする。
目ざす柿の木は里山のメンバー、杉本さんの庭。赤く実った柿が遠くからでもつづら成りなのがわかる。
そばまで行くと「うわー、でかー!」「すげえー、いっぱい」と、これまたシイタケに劣らぬ感想が。
低いところは子供たち、高いところはお父さんお母さんで。「でも、僕は肩に乗ってとりたいよー」
戻ってからは、河原さんを先生に「竹細工」。
「竹笛は、こうして、竹を組み合わせて自分で吹いてみて、いい音の出るところで接着剤で止めるんだよ」
はじめは「えっ、鳴らないよー」「どうして?」ととまどっていた子も、竹の位置を変えていくうちに「ピーッ!あっ鳴った」
そうしたら、あの子も、この子もウグイスならぬ竹笛が「ピー、ピ-、ピー」と里山中に鳴り響く。
葉っぱの裏に何やら文字が、これは葉手紙と言って、裏が白い葉に枝で文字を書く遊び。
「へえ、おもしろい、私も書こう」
”あーちゃん、いつもやさしくしてくれて、ありがとう、また、あそぼうね”
「竹切りしたい人、いますかー?」めだかの学校、沖指導員の呼びかけに一人が挑戦。ギコ、ギコ、ギコ、「あ、切れた!」
「僕もやる」と次なるチャレンジャー、お後は列をつくっての順番待ち。
これを観ていた勝部、「やっぱり、子どもは、こういうのをやりたいんだよね、危ないからって遠ざけてばかりじゃダメなんだよ」
野生に目覚めた?子どもたちの更なる挑戦は、展望台から下げられたロープを伝っての「ロープクライミング」
黙って見ていた親たちも、じっとしておれなくなって、「そらっ、もうすこしだ」「ガンバレ、ガンバレッ」とそばまで行って声援。
「スゴイじゃん、登れたね、がんばったねー」親たちが知った、子どものやりとげる力。
あっという間の里山体験、おみやげは、山盛りの柿とシイタケ、焼いも、竹トンボに竹コップ。でも一番のおみやげは今日、自分で得た「自信」
「里山は子どもの生きる力を育てる」そのことをテーマにこれからも里山メンバーと環境学習センター「めだかの学校」の活動は続く・・・。
(レポート・写真 三宅 優)
朝靄(もや)の立ちこめる国道53号、竹枝小学校前に8時に到着。川の方からショベルカーの音が響く。
旭川の水をせき止め、干上がった川底の石を動かし、中に住む生きものの調査をする。
今ではすっかり名前が定着した「旭川かいぼり調査」が本日、行われた。
昨年はコロナ禍を万全を期(木)して実施された。今年はさらに一般参加者を地元の小学生に限定し、厳しい対応で開催となった。
とは言え、これだけの規模の調査をする上では最低の人員は必要で、この日もスタッフ、地元のボランティア含めて数十人が岸辺にテントを建て、準備に余念がない。
川そばまで行くといつになく水が少なかったようで、完全に剥き出しになった石がいたるところに転がっている。すぐに冷気が足下から伝わり、慌てて陽の当たる土手へと舞い戻る。
9時、岡山理科大学の学生さんを乗せたバスが到着、約60名が「おはようございまーす」と声をかけながら岸辺にやってきた。
同時に地元の小学生の家族も集まり始め、「参加予定者」の名簿はほぼ〇印で埋まった。
9時半より開会式。
入野実行委員長より「今日は楽しみながら、学びながら、有意義に一日を過ごしてください」とのあいさつ。
続いて進行役の友延さんより「私たちは2006年から川の変化を地域の人と調べようとやってきました。
今日の目的はアカザとカジカの調査と川のクリーンアップ、そして石を動かすまでやって終わります」と説明を受け、さっそく参加者はそれぞれの調査地点に移動。
そこでもスタッフから調査魚の写真や特徴を教わり、子どもたちはすでにやる気マンマン。
「では今から、11時半までお願いしまーす」で開始。
コロナ前の調査時は人の姿で川原が埋めつくされていたが、今回は一家族で広々と川を探索できる”ゆとりのある自然とのふれあい”が実現。
参加したくても出来なかった大勢の方がおられると聞いているのだが、これはこれで、とてもいい雰囲気。
開始、数秒、さっそく第一声。「やったー、やったー!」どうやら何か見つけたらしい。
「アッ、アッ、アッ!」もう言葉にならない子もいて、一人が見つければ、もう一人も「あっ、ここにもいる」「ねぇ、ここにも」
始まる前に少し時間があったので、久しぶりに「かいぼり調査」の発起人、佐藤康彦さんに話を聞いた。
(記者)「よく続けられていますね」
(佐藤さん)「コロナで何もかも中止になってるけど、そうなると再びやるということがすごく大変でしょう。少しでも何とか続けられれば、動きが止まらないでいられるし、
こうして目的があれば川原の整備も草刈りもみんなでやろうと言うことになるでしょう、それが大切だと思います」
物理的な損失よりも、人の心が離れることの損失、続ける意味はそこにあるのだと深く感じた。
調査地点には採取した魚を種類別に入れる大きな水槽が置かれ、スタッフが「これはアカザだよ」「これはカジカではなくドンコだよ」と教えてくれている。
水生昆虫のコーナーもあり、およそ一般人には名前の分からない虫たちをルーペで一つ一つ説明してくれて、生きものの多様性が知ることができる。
「間もなく終了でーす」のスタッフの声。
水槽のガラスにはモクズガニ、サワガニ、ギギ、アブラボテ、ブラックバス、シマドジョウ、オヤニラミ・・・、そして参加者が運んでくるバケツからアカザ、カジカ、ドンコ、ヨシノボリ・・・。
環境学習センター「アスエコ」の指導員、柏さんによる、採取した生きものを学ぶ時間。
「知って欲しいのはアカザがいるということの自然の大切さ、それと外来種など環境を害するモノの正しい扱い方を知るということ」
ここにいると気づかないでいる自然、当たり前に川石にトンボが止まり鳥のさえずりが聞こえる、そのことの貴重さ。意識して学ばないと失ってしまう地球環境。
会が無事終わり、朝、あれほどありがたかった陽の光も、日影がうれしい時に変わっている。
子どもらは帰るでもなく友だちとブランコを揺らし、木々に止まり、そのそばで母親たちは尽きることのない子育て話に花を咲かせる。
豊かな自然は、豊かな時間を運んで来たようだ。
(レポート・写真 三宅 優)