■「新たけべの彩時季」
やっと学校がスタート、給食も始まった。保護者の方にとっては、待ちに待った日、なんとこれまでの長かったことかと感慨ひとしおではなかろうか。
コロナ災禍、まだまだ予断は禁物だが、この間を振り返ってみるのはどうだろう。
通常は学校で生活しているはずの子どもたちが一日家にいる、さらには大人の中にも自宅勤務が余儀なくされた場合だってあるだろう。
生活はどのように変化し、特に食事はどう対応したのだろう。
そんな疑問に岡山市建部町公民館の主催講座「ESD建部町で食品ロスを考える会」がコロナ休校中における家庭での食生活について、建部町小中学校の児童を対象にアンケートの実施を企画している。
2017年に発足した「・・・考える会」はこれまでも食べ物を大切に活かすための調理実習や食事会の開催、食の無駄を無くすPR冊子などを発行して来た。
今回のアンケートでは「大変だったこと・困ったこと」「食生活で変わったこと」「子どもと作ったメニュー」「買い置きしたもの・作り置きしたもの」「食生活で工夫した点」などの問いに答えてもらい、その結果をまとめ情報を共有することで、今後同じことが起きた場合に役立てるのがねらい。
実施に当たり何度か打合せを重ねてきた会だが、すでに学童を抱える母親からの声がいくつか寄せられ、その中には「毎日、1日中、台所に立ってるようだった」「子どもが自分で用意するようになった」「新しいメニューに挑戦した」など、大変さと良かったことの意見が混在する。
また記者もいくつか聞く機会があり「コロナ休校前と後で違う点」について取材したが、男性から「昼食の手間が増えただけでは」「休みの日と変わりないのでは」との回答もあった。家庭の切り盛りすべてを女性に委ねてきた男の実態もうかがえる。
会の中心メンバーで自身が管理栄養士である森本美登里さんは「人は食べなくては生きていけません。コロナ休校で食生活をどう乗り越えたかのヒントを得ることで皆さんの知恵を活かす手助けになればと進めています。会の調理実習にも取り入れて、そのときに役に立つ提案ができたらいいなと考えています」
と話している。
このコロナが今後どう影響するのか未知数だが、これまで当たり前として動いていた社会がその活動の大部分を停止した中で、何が大切か、何がそれほど必要としないものか、個々の人が立ち止まり考えるきっかけにはなったのでは。
アンケートは6月1日(月)以降に建部町小中学校を通じて児童の家庭にお願いする予定。賛同者からの回答はその後、集計、まとめをして再度、学校、児童の家庭にフィードバックされるとのこと。「災い転じて福となす」当新聞でも結果を公表していきたい。
(取材・写真 三宅優)
いくつかの県で緩和が出はじめた週末、建部平野では、土をかく耕運機の唸りが響き黙々と田植えの準備をする人たちの姿が目に付く。
農作物はウイルスの影響で遅らせるわけにはいかない。
春に耕し水を引き、苗を植えて秋の収穫を待つ、何千年と繰り返して来た人の営み。
今日、ここ品田地区にある「一ノ口井堰」の用水の取り入れ口でも、水利の責任者の人らが集まり水門を閉じる作業に入った。
用水を干し、明日から水路に溜まった土砂やゴミを取りのぞき、これから秋までの水の流れを確保する。
これもおそらく数百年は続けられた行いだろう。
そしてこのタイミングに、旭川の生き物を捕え触れ合おうという岡山市環境学習センター「めだかの学校」主催の企画が始まったのがほぼ10年前。
記者も発起人の井口松治さんの呼びかけで参加して来た。
これまでに幾度となく大捕り物が繰り広げられてきた。
ただ今年だけは、街中からの水路を埋める家族連れもなく、子どもらの歓声も聞こえない、自粛で中止となったから。とは言え、昨年仕掛けた簗は一度、陸に上げねばならず、となれば魚の顔も観て見たい。
子ども心を捨てられない大人たち数人による「魚とり」の始まり。
開始と同時に乗りつけたのは「アスエコ」メンバーで昨年も講師として来てくれた柏さん。
「いやあ、こんな中ですけど、ここの魚とりだけは、やるだろうなあって思って来ました(笑)」
さすが、類は類を?そうなんです、どんなのが仕掛けに掛かってるか1年、わしらも気になっていました(笑)。
今回、初めてとなる「めだかの学校」の武藤館長「来年があるので、どういうものか見ておかねば」と参加。
水中には先ほどから30㎝クラスの鮒の群れが右に左にと行き交う。段差のある下手では、水が引くのに併せて「バシャッ!」と水しぶき、巨体が跳ねる。
「今年は、やけに大物が多いなあ」
自分の仕掛けに自信を得た井口さんの表情がほころぶ、しかしすぐに「これを、子どもたちが見たら喜んだじゃろうに」と残念顔に。
柏さんが、次々に仕掛けを持ち上げては網に移し始める。
「ナマズに、おっ、ウナギだ!」さっそくの大収穫、立て続けに「あっ、2匹目のウナギ!」
大型の網を用意したのに、それからはみ出さんばかりの、フナ、ナマズ、そして鯉。
「いやあ、こいっつは大きいなあ」ベテラン指導員の沖さんの両手におとなしく収まった「まな板の鯉」
館長も「こんな大きい奴、見たことない、すべて初めてです」
そう言う武藤館長、我らより若いだけあって動きも機敏、修得も早い、網を手に次々と大物ゲット。
柏さん「いや、そういう大きいのより、小さめなのが捕りたいんです」
アカザ、ドンコ、ヨツメ・・・、旭川の清流を知る貴重な生き物。
開始から40分、ほぼ回収、いつもなら、まだ家族で魚を追い駆け回っているだろうに。そんな寂しさが常につきまとったコロナ災禍の「魚とり」。
ナマズや鯉は大河に返してやった。
明日、一年後に向けて新たな仕掛けをする。
その時は誰にも予測できない、克服してるのか、また別の戦いが起きているのか。
ただ、夢は描こう、きっと来年「あっ、お父さん、ウナギだ!!」と子どもの声が聞こえることを・・・。
(取材・写真 三宅 優)
人の外出で密集が懸念されるゴールデンウイーク、街中に生活する人たちはどう過ごすのだろう。
マンションのベランダでバーベキュー、家族そろってスーパーに買物に、閉じこもることに耐えられずついつい発散を求めてしまう。
特に都市部の狭いアパートや隣同士が密接する住宅で暮らす人たちには、一日外に出ないことが相当なストレスと考えられる。
ここ建部町ではどうだろう。「町」と名前は付いているが、ほぼ「郷(さと)」が相応しい地域。
当然、建物の敷地より自然が圧倒的、人の数より他の生き物の方が多い。記者宅に住みついたネコたちも、日中は家でゴロゴロ、夜になるとモグラ、野ネズミ、昨夜は野ウサギまで捕まえて帰る。
住民たちはというと、いつもより外で見かけることが多い。外と言っても田んぼや畑、裏山でせっせせっせ、特に草刈り機の音は至る所。田植えの準備、新しい野菜の苗を植える。そばにいるのは勝手知ったる妻に夫。
「他所に出かけるな」と言われても、「そんな暇はない」。田舎は自然を相手にやることが山のよう。
作日もその一つ。地区で管理している山頂にある貯水池から引いている水路の土砂かき。
至る所をイノシシが掘起こし、倒木もふさいでU字溝が埋もれてしまっている。それをスコップやジョレンで取り除く。
最終地点まで数百メートル、一カ所、一カ所、開通させてやっと終了、気がつけばこの間、休むことなし。
それでも水が気持ちよく流れるのを見ると疲れも洗われる。
午後からは当然、どこもが草刈り、体力、年齢との戦い、いつまでやれる?
刈った草をヤギに与えるのも愉しみ、自然と生き物と人間がほど良くバランスをとって、ここ建部ではこのウイークも閉塞することなく過ごせそうだ。
(取材・写真 三宅 優)