石を並べるだけ、模すのは古今の名画。「石で描く世界美術館」シリーズ第8回は19世紀のフランスの画家ジョルジュスーラ。
光の明るさを求め、絵具を混ぜることなく原色のまま点で置いて描く点描を発見、新印象派の幕を開いた天才画家。弱冠31歳で没するも60数点の油絵の傑作を残す。
現代美術画家、三宅 優(当新聞 副編集長)が「おもちゃの宿」での現地制作120日、5作品を完成。
令和5年9月30日迄で展示され、会期終了後、解体、バケツに収まることになる(笑)
以下、副編集長自らが振り返りのレポート。
石の制作を始めるにあたって何を描きたいかと考えた時、スーラの作品が強く浮かんだ。しかし、どれも大作であるし自分の力に不安もあった。
2年余りを経てある程度やれる自信もついて来て、それとコロナも落ち着き、今年はそれまで続けてきた「めだかの学校」での夏休み授業「ストーンペインティング」がやれると分かり「じゃあ、それに合わせてその場で制作して、子どもらに参考作品として観てもらおう」とこの4月、館長にお願いして了解を得た。
会場は館内の施設「おもちゃの宿」、メジャーで計測し作品の大きさと点数を割り出した。取り組むのは5点、内、2点は
畳3枚分の大きさとなる。
「ゴーギャン展」を終えてすぐの5月初め、畳3枚分の作品に着手。ベースにしたのは断熱材に使うスタイロフォーム、これは表面がザラザラして
石の座りがよい、色も薄いブルーなのが気に入った。
最初は本丸「グランドジャット島の日曜日の午後」から。女性の膨らんだスカート、当時流行の日傘、男性のシルクハット、ステッキ、小島の芝生で休暇を楽しむ市民の姿。
複雑に交差する何十もの水平、垂直、斜め線の構図。作品コピーに中心線を引き、ベースにも同様の線を入れる。
1枚目を7割程度終え、2枚目に移り3週目に最終部に着手したところ、大きな間違いに気づく。この上部に描かれた樹木は1、2枚部分の森と同位置にあると思っていたら、手前の芝生に立っていることがわかる。
この木々の茂みを新しくすると、2~1枚目の背景の樹木部分をすべてやり直すことになり、影響は手前、人物に使われた石にまで及び、結局、ほとんどを回収、再作。
でも、石のいいところは消す必要がなく、何度でも並べ替えれば済む点にある(笑)。
次の日、コメリに行き1cmのスチレンボードを2枚購入(一枚380円と安価で表面は同じだから)。この下に古襖を基底板として敷く。
題材は「サーカス」これは白地のまま進めることにする。理由は作品中に小さな人物が多い(43人)ため、ある程度コントラストが必要と考えたから。
最初の石は手前、道化師の帽子と頭の接点、この石がこの後の石、すべてを決める。
これも、どう石を置くか直観で手が石を選ぶに任せ、進める。
7月初め「サーカス」を終え、次の「化粧をする若い女」に取り掛かる。
絵のモデルはスーラの恋人、素性もわからない、スーラ亡き後も不明。女性を取り巻く、渦上に描かれた背景、これこそがスーラの絵画空間を構築する波長(ちなみにゴッホの波長は上へ上へと伸びて行き、セザンヌは上から斜めに下りて来る)
ベースは薄桃色の1200X900のスチレンボード。
朝から弁当持参で閉館、午後5時まで仕事ができたおかげで7月14日に終える。
次は1週間後、この間、各種イベント、新聞の取材、町内会の雑務に追われつぶれてしまった。しかし、このことから来るストレスが逆に制作欲を充満させる(笑)
「シャユ踊り」別名、カンカン踊りとも言われる、当時人気のキャバレーの出し物を題材にしている。
これは劇場内の照明の雰囲気を出すため、スチレンボードに黄色い着色をする。
8月10日終了。
ラストは「サーカスの客寄せ」。コメリから3枚のスチレンボードを追加、薄いピンクの彩色を入れる。
この作業スペースを残し、これまでの作品を館内に展示する。
8月20日には「ストーンペインティング」の夏休み授業を実施、参加した子どもらに作品を鑑賞してもらう。
最後になりましたがこの場を借り、制作と展示の機会を与えて下さった岡山市環境学習センター「めだかの学校」武藤館長、及び職員の方にお礼申します。
(レポート・写真 三宅 優 三宅 美恵子)
開催期間:「石で描くジョルジュスーラ展」
令和5年9月30日まで
会場 :岡山市環境学習センター
「めだかの学校」おもちゃの宿
開館時間:9時00~17時00分
入場料:大人310円 子ども100円
定休日:毎週火曜日(年末年始)
お問合せ:086-722-1231